初夜おめでた ページ9
「……………ん」
障子の隙間から差し込む光に頬をくすぐられ、重いまぶたを開いた。
すると、途端に身体が激しく痛み出して、つい眉をひそめる。
全身がすごくだるい。
だけどわたしを抱きしめて眠る小狐丸さまの姿を見ると、その痛みすら愛おしくなる。
「……A、起きたのか」
「ごめんなさい、起こしましたか?」
「いや、大丈夫じゃ」
その声を聞いたら、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
昨日の行為がありありと蘇り、つい落ち着きなく視線をさまよわせていると、小狐丸さまに声をかけられる。
「身体は平気か?」
「は、はい。……大丈夫です」
小狐丸さまは「そうか」とわたしをひと撫でして、ちらりと時計に目をやった。
「まだ起きるには早いのう。どれ、もう少し寝ようぞ」
そう言ってわたしを優しく抱き寄せる。
最愛の人にこんなにも愛されて、幸せと言わずにはいられない。
「愛しております、小狐丸さま」
わたしは静かに呟くと、また彼と一緒に眠りに落ちた。
それからしばらくたったある日のこと。
「っう………」
突然の吐き気に苛まれ、わたしはいそいで洗面所に走った。
ここ最近、体調がすぐれていないのかずっとこの調子だ。
小狐丸さまにいらぬ心配は掛けたくないので黙っていたが、今日はいつも以上に身体がだるく仕事も手に負えない状況だったので主さまに相談してみることにした。
「あら、まあまあ……!」
主さまの表情はなぜだかとても嬉しそうだった。
「主さま?」
「おめでとう。ようやく成せたのね」
「えっ…?」
「あなたのお腹の中、赤ちゃんがいるわ」
一瞬なんのことかわからなかったが、ハッと我に返りことの情事を理解する。
「えっ、あ……ほんとに………?」
聞けば、吐き気や体調がすぐれなかったのは妊娠がわかった時の特有の症状だとか。
嬉しいはずなのに、なんだかあまり実感がわかない。
「皆にも伝えておきます。妊娠中の身体はとても敏感だから、くれぐれも気をつけてね」
「はい。ありがとうございます」
信じられない。
ようやく成せたんだ。
「小狐丸さまとの、かわいい我が子」
ぽろりと熱いなにかが頬を伝った。
早くこの喜びをあなたに伝えなければ。
「小狐丸さま」
わたしは出陣中の小狐丸さまの帰りを、静かに待った。
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抹茶いなり(プロフ) - 御冷ミァハさん» ありがとうございますm(_ _)m学園祭シーズンで忙しくなかなか更新できませんが、がんばります!(*´˘`*) (2016年9月28日 20時) (レス) id: 169debfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
御冷ミァハ - 更新楽しみにしています(*´ω`*) (2016年9月28日 1時) (レス) id: a414c3ef52 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶いなり(プロフ) - 梅雨さん» あああ(゚д゚lll)本当ですね!!教えてくださりありがとうございます!更新がんばります(*´˘`*)♪ (2016年9月8日 0時) (レス) id: 2d00be186d (このIDを非表示/違反報告)
梅雨 - すごい面白いです!!でも『子狐丸』ではなくて『小狐丸』ではないでしょうか?でしゃばってすみません!!でもとっても面白いので更新頑張ってください!! (2016年9月8日 0時) (レス) id: 6b74b1d272 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬織あやの | 作成日時:2016年9月6日 0時