幸せになれば ページ21
『幸せになりたい』
少女は確かにそう言った。
眩しくなる視界に目を開けることが出来ずまぶたを閉じた。
『ありがとう』
その声と同時にふわりと身体が軽くなり、手の中に抱きしめていた少女の感触がなくなった。
けれど確かに、ここに温かいものがある。
「すぐに会えます。その時は必ずあなたを幸せにしてみせますから」
わたしはそっとお腹を両手で包み込んだ。
待ってて。
わたしのかわいい愛娘。
「ふえええぇぇえん」
産声に目を覚ますとそこは見慣れた部屋の中だった。
布団の周りでは主さまとすべての刀剣男士がわたしを不安げに見守っていた。
そしてわたしの意識が戻ったことを確認すると、みんな一斉に喜びの声を上げた。
「おめでとうございます!!Aさん!!」
「よく頑張ったな!!」
「出産なされた後意識を失うものですから…兼さんが取り乱して大変でしたよ」
「ばっ!!それを言うならコイツもだろ!?」
石切丸さんと獅子王くんに引き続き、堀川くんがからかいを交えると、兼定さんがまたも取り乱したらしく顔を赤くして先程からわたしの手を握っていた最愛の人を指差した。
「小狐丸さま!!」
「A、よく頑張ったな!」
溢れ出す涙を抑え切れなくなり、わんわんと泣いた。
どうやらわたしも取り乱してしまったようだ。
必死に小狐丸さまのぬくもりを求めて抱きしめた。
「Aちゃん、よく頑張ったわね」
そんなわたし達を主さまが微笑ましそうに眺めていた。
その手には、白い毛布に包まれた小さなものが抱かれていた。
「主さま!!」
急いで起き上がり主さまのもとに近寄った。
「これ。そう急ぐでない。母体はもう少し安静にしておかねば」
心配する三日月さんに主さまは笑いかけると、抱いていた毛布をわたしに差し出した。
「ああ……」
その中身を見てまた目尻が熱くなる。
「この娘が、私とお主の子どもじゃ」
小狐丸さまが目の前の小さな赤子の頬をふにふにとつついた。
その子はわたしの腕の中で「ふぇ」と言うと、なんとも愛らしい笑顔を向けてくれた。
「こいつは驚いたな!なにせ小狐丸そっくりだ」
横から顔を出して鶴丸さんが言った。
確かに、白くて柔らかい髪の毛と赤い瞳は小狐丸さまにそっくりだ。
「大きい瞳は母親譲りだな」
三日月さんが付け足した。
「必ず幸せにして見せます」
わたしは呟くと、その小さなおでこに口付けを落とした。
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抹茶いなり(プロフ) - 御冷ミァハさん» ありがとうございますm(_ _)m学園祭シーズンで忙しくなかなか更新できませんが、がんばります!(*´˘`*) (2016年9月28日 20時) (レス) id: 169debfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
御冷ミァハ - 更新楽しみにしています(*´ω`*) (2016年9月28日 1時) (レス) id: a414c3ef52 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶いなり(プロフ) - 梅雨さん» あああ(゚д゚lll)本当ですね!!教えてくださりありがとうございます!更新がんばります(*´˘`*)♪ (2016年9月8日 0時) (レス) id: 2d00be186d (このIDを非表示/違反報告)
梅雨 - すごい面白いです!!でも『子狐丸』ではなくて『小狐丸』ではないでしょうか?でしゃばってすみません!!でもとっても面白いので更新頑張ってください!! (2016年9月8日 0時) (レス) id: 6b74b1d272 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬織あやの | 作成日時:2016年9月6日 0時