引き上げて、受け止めて。 ページ20
重たい足を引きずってなんとか『わたし』のもとにたどり着いた。
その時にはもうすでに身体は胸の辺りまで沈みかけていた。
「あなたは誰?」
小さな『わたし』は涙で滲んだ瞳でわたしを見つめた。
わたしは必死になって叫んだ。
「負けちゃ駄目!!あなたは…役立たずなんかじゃないの!!!」
溢れる涙が『わたし』の頬に落ちていく。
『何を今更…。とと様もかか様も死んじゃったのに、わたしのせいじゃなかったら誰のせいなの?』
「あなたのせいじゃない!!あなたにはこれから沢山の幸せが訪れるの!!あなたを大切に思ってくれる人はこれからも沢山現れるの!!!」
『…うるさい!!わたしは役立たずなの!!最後まで役立たずだったわたしに生きる価値なんてない!!』
鋭い視線を向けられて言葉が出なくなった。
『二人を置いてわたしだけ幸せになるなんて…そんな事出来ない』
その途端、わたし達を取り巻く水溜りが勢い良く渦巻いた。
身体はますます沈んでいく。
「A!!手を貸して!!」
『嫌!!』
引きずり出そうと手を差し伸べ、あっけなく振りほどかれた。
「どうすればいいの?」
もうわからなかった。
わたしは、過去を断ち切れていないままだった。
「小狐丸さま」
最愛の人の名前を口にした。
わたしはあなたに出会えて幸せでした。
だけどそれは、わたしに訪れるべき幸せでは無かったのでしょうか。
わたしに幸せなんて言葉は必要無かったのでしょうか。
A
誰かに名前を呼ばれたような気がした。
A殿
Aさん
A
Aちゃん
『A、私と共に幸せになろう』
『わたしが幸せになってもいいのですか?』
『当然じゃ』
『それはどうして?』
それは。
「あなたには幸せになる権利があります!!」
『!!?』
振りほどかれた小さな手を無理やり引っ張った。
あの時、小狐丸さまは言ってくれた。
過去に何があろうが、未来は、自分の幸せは、自分で決めるのだと。
わたしにはその権利があるのだと。
「だからわたしは幸せを選んだ!!」
小さな少女は目を見開いた。
それはもう、大粒の涙を浮かべて。
『いいの?』
少女は手に力を込めた。
『幸せになって、いいの?』
わたしは応える代わりにその手を身体ごと引き上げた。
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抹茶いなり(プロフ) - 御冷ミァハさん» ありがとうございますm(_ _)m学園祭シーズンで忙しくなかなか更新できませんが、がんばります!(*´˘`*) (2016年9月28日 20時) (レス) id: 169debfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
御冷ミァハ - 更新楽しみにしています(*´ω`*) (2016年9月28日 1時) (レス) id: a414c3ef52 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶いなり(プロフ) - 梅雨さん» あああ(゚д゚lll)本当ですね!!教えてくださりありがとうございます!更新がんばります(*´˘`*)♪ (2016年9月8日 0時) (レス) id: 2d00be186d (このIDを非表示/違反報告)
梅雨 - すごい面白いです!!でも『子狐丸』ではなくて『小狐丸』ではないでしょうか?でしゃばってすみません!!でもとっても面白いので更新頑張ってください!! (2016年9月8日 0時) (レス) id: 6b74b1d272 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬織あやの | 作成日時:2016年9月6日 0時