三日月 ページ16
祝杯を終えて廊下に出ると、そこには三日月さんの姿があった。
夜空に映える美しいその姿に思わず見入ってしまう。
「宵闇が深くなっておりますゆえ、そろそろお部屋に戻られてはいかがでしょうか?」
その隣には酔いつぶれて眠ってしまっている石切丸さんと小狐丸さまのお姿が。
わたしと主さまたちが部屋でお話をしている間、ここでゆっくりとお酒を堪能していたらしい。
「そうだな。俺も少し眠たくなってきた」
ふわ、とあくびをすると三日月さんも縁側にごろんと寝転んだ。
「ここで寝たら風邪をひきます。もうすぐ11月なんですし、身体を冷やしては大変ですよ?」
「あいわかった」
やわらかく微笑むと三日月さんはわたしに目を合わせた。
そしてゆっくりと話し始める。
「小狐は大切な弟君だ。いつも『あにさま』と俺の後を付いてきてな。全く可愛らしい」
今も十分ですよと、わたしは小狐丸さまの髪を撫でながら笑った。
「まさか小狐の奴が結婚するなどとは思わなかったな」
「ふふ、わたしもまさか小狐丸さまとこのような関係になるなんて思いもしませんでした」
あの頃はわたしもそれどころではありませんでしたから。
そう付け足すと、三日月さんがぴたりと口を止めた。
「どうかされましたか?」
月明かりに照らされる中庭に冷たい風が流れ込む。
「あの頃は、俺も色々あったものだ」
寂しそうな声音でそう呟き、なんとなく空気が重たく感じた。
「俺は…お主らが羨ましいのかもな」
「え……?」
「俺にも思い出したくない過去がある。現に今もあいつの姿を見ると、愛おしいような恨めしいような感情に囚われてしまうのだ」
意味深いその言葉にどくりと心臓が脈打った。
その言い方だと、まるで三日月さんにも夫婦(めおと)となった女性がいたかのようだ。
一体なにが?
「あいすまぬ、つまらぬ話をしてしまったな」
先ほどとは打って変わって、いつも通りの優しい顔で笑う三日月さん。
内心ほっとしながらわたしは酒瓶を手にとった。
けれど妙に引っかかる。
『現に今もあいつの姿を見ると、愛おしいような恨めしいような感情に囚われてしまうのだ』
三日月さんの言う『あいつ』とは一体誰なのか。
その美しい姿の裏になにを隠しているのか。
もしも三日月さんにわたしと小狐丸さまのような間柄の人がいたとするのなら、
「……………………」
それは……
わたしにはあのお方しか考えられない。
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抹茶いなり(プロフ) - 御冷ミァハさん» ありがとうございますm(_ _)m学園祭シーズンで忙しくなかなか更新できませんが、がんばります!(*´˘`*) (2016年9月28日 20時) (レス) id: 169debfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
御冷ミァハ - 更新楽しみにしています(*´ω`*) (2016年9月28日 1時) (レス) id: a414c3ef52 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶いなり(プロフ) - 梅雨さん» あああ(゚д゚lll)本当ですね!!教えてくださりありがとうございます!更新がんばります(*´˘`*)♪ (2016年9月8日 0時) (レス) id: 2d00be186d (このIDを非表示/違反報告)
梅雨 - すごい面白いです!!でも『子狐丸』ではなくて『小狐丸』ではないでしょうか?でしゃばってすみません!!でもとっても面白いので更新頑張ってください!! (2016年9月8日 0時) (レス) id: 6b74b1d272 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬織あやの | 作成日時:2016年9月6日 0時