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ひとひらの幸せ-小狐丸side- ページ11

「…………………」

一体どれほど眠っていたのだろう。

目を覚ますと手入れ部屋の見慣れた天井があった。

まだ少し痛む身体を起こそうとして手を付くと、腹部にずしりと重みがかかる。

「なんじゃ?」

ゆっくりと上体を起こして確認してみると、そこには最愛の妻がすやすやと寝息を立てながら眠っていた。

目尻には薄っすらと涙の跡がある。

心配して、ないてくれていたのだろうか。

「すまぬ、A。お主に心配をかけさせてしもうたな」

Aの柔らかい栗色の髪を優しく撫でて、口元を緩めた。

本当に愛いやつじゃ。

すると今度はAが目を覚まし起き上がる。

「ん、起こしたか」

いえ、と優しくはにかむAに触れるだけの口吸いを落とす。

Aはごしごしと目をこすってから

「おかえりなさい。ご無事でなによりです」

と、寝起きのふにゃんとした笑顔で言った。

私は耐えられずもう一度Aに口吸いをした。

「小狐丸さま」

「どうした?」

「その…大切なお話があるのです」

照れくさそうに言う彼女は自分の腹に両手を添えると、真っ直ぐな瞳で私の目を捉えた。

「お腹に子どもを授かりました」

「……!!」

声が出なかった。

まさか、こんなおどろきの知らせを聞かされるとは。

「A」

嬉しいはずなのに、伝えたい事は沢山あるはずなのに、いざとなると言葉を返すことができない。

私は言葉を発す代わりに強くAの身体を抱きしめた。

「ようやっとじゃな」

「ふふ、まだこれからが大変ですよ」

Aはその思いを受け止めるようにして、私の腰にキュッと腕を回した。

私はもとい刀。

主様にお仕えする為に、ここにいる筈だった。

けれどもAと出会ってから、恋に落ち、夫婦になり、いつの間にか人間同様の日々を送っていた。

一時は本当にこれで良いのかと迷った時もあった。

けれど、目の前で幸せそうに微笑み、愛しいやや子を大切に大切に守っているAの姿を見て、私まで幸せと言わずにおれるものか。

「A、私はいま幸せじゃ」

かすかに滲む視界の中で、お主の頬を撫でた。

これからは二度とこのような心配はかけさすまい。

今日からはAだけでなく、腹の中の愛しいやや子も守れるように人事を尽くさねば。

愛しておる。

それだけ言うと、私はもう一度Aの唇に触れた。

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抹茶いなり(プロフ) - 御冷ミァハさん» ありがとうございますm(_ _)m学園祭シーズンで忙しくなかなか更新できませんが、がんばります!(*´˘`*) (2016年9月28日 20時) (レス) id: 169debfbe3 (このIDを非表示/違反報告)
御冷ミァハ - 更新楽しみにしています(*´ω`*) (2016年9月28日 1時) (レス) id: a414c3ef52 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶いなり(プロフ) - 梅雨さん» あああ(゚д゚lll)本当ですね!!教えてくださりありがとうございます!更新がんばります(*´˘`*)♪ (2016年9月8日 0時) (レス) id: 2d00be186d (このIDを非表示/違反報告)
梅雨 - すごい面白いです!!でも『子狐丸』ではなくて『小狐丸』ではないでしょうか?でしゃばってすみません!!でもとっても面白いので更新頑張ってください!! (2016年9月8日 0時) (レス) id: 6b74b1d272 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬織あやの | 作成日時:2016年9月6日 0時

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