第21話 ページ22
鬼道｢敗北の報告なんて、聞きたくなかったでしょうね。
だけど、敗北にも意味がある、いや、寧ろ敗北にこそ…それを僕は学びました。｣
父｢…謝らなければいけないな。｣
鬼道｢え？｣
父｢私は、お前のことを影山さんに任せきっていた。｣
鬼道｢義父さん…｣
父｢期待だけ背負わせて、私自身が何もしてやらなかった。それなのに、愛情を注いでいるつもりになっていた。父親として恥ずかしい。｣
鬼道｢…｣
父｢お前は、私の期待以上のものを、自らの手で学び取ったようだ。それは、3年連続優勝よりも価値がある。約束通り…｣
鬼道｢春奈を引き取る件なら、もういいんです。｣
父｢え？｣
鬼道｢僕も、妹を引き取るのが、兄としての愛情のつもりだった。恥ずかしい思い込みです。
義父さんに、似たのかな。｣
父｢そうか。…A。｣
A｢…！｣
私は、恐る恐る顔を出した。
父｢こっちへ来なさい。｣
A｢…｣
私は、お父さんの前に立った。
ｶﾞﾀｯ
お父さんは立ち上がって、私の前に立つ。
お父さんの手が伸びてきて、私は咄嗟に目を閉じた。
ﾌﾜｯ…
A｢お父、さん…？｣
目を開けると、お父さんは私の頭を撫でていた。
父｢お前には、ずっと苦しい思いをさせてきた。本当にすまなかった。｣
A｢そんなこと…｣
私は、お父さんを安心させるように笑おうとした。
父｢無理に笑顔を作らなくていい。私に心配をかけまいと、いつも無理矢理笑っていたこと…気付いていた。｣
A｢…！｣
父｢これからは、今まで向き合えなかった分、ちゃんと向き合うつもりだ。
A、もう我慢しなくていい。自分に自信を持て。お前は、私の自慢の子供だ。｣
お父さんは、優しく微笑んだ。
A｢…！お父さ…うわあぁぁんっ！｣
私は、今までの我慢が溢れ出して、泣き出した。
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作者名：苺の花 | 作成日時：2019年9月27日 21時
