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あのとき彼女にキスをしたのだって、もう会えなくなってしまうという焦りからしたのだと思う。
それなら、あいつが転校しなかったら、キスだってしなかったわけで。となると今はまだ、彼女に想いも伝えられていないのかもしれない。
それならまだ、今のほうがマシだ。……マシ、なのか？
よくもこんなにこじらせられたな、と思わず自分自身に感心してしまう。いや感心してる場合じゃないんだけど。
俺はちらりと勉強机に置かれた時計に目を向ける。まだ、メールを送信してから三分しか経っていなかった。
彼女から来るであろう電話を、少し期待しながら待つ。かかってこないかもしれないという不安を押し込めて、待つ。
それから数分の時間が過ぎて。
突如、軽快な音楽とともに携帯がバイブレーションした。
「……！」
少しの緊張と期待とともに、俺は携帯を開く。
ーーAA 着信中…
震える指を動かし、電話を取る。
「もしもし？」
『……なに？』
少し疲れたような声で、彼女が言った。不機嫌なようにも、聞こえる。
部活が忙しいのだろうか。それとも勉強が忙しいのだろうか。それとも……霧野蘭丸と、うまくいっていないのだろうか。
心が疼く。黒いモヤモヤとしたものが、噴出してくる。
あれだけ酷いことを言ったのに、立派に嫉妬して。何様のつもりなんだよ、俺は。
自分に嫌気がさしてしまい、頭を振る。
そうじゃない。今はそんなこと考えてる場合じゃないんだ。
俺は小さく息を吸い、喉を震わせる。
「……ごめん」
自分でも笑ってしまいそうなくらいに弱々しい声に、自嘲気味に笑う。それに、彼女は。
『……もう、疲れちゃった』
Aはどこか吹っ切れたように、乾いた声で笑いながらそう言った。
「……は？」
『もう、疲れちゃったよ、豹牙』
「なに、言って……」
疲れた？ どういうことだ？ まさかこいつ……
「今どこだ！？」
『……部屋にいるけど。自室』
「……あ、そうか」
……早まった考えをしていたのは、どうやら俺の方だったらしい。
まあ、そうだよな。いくら抱え込みやすいって言ったって、そういうことは考えないよな、あいつは。
……余計な心配させやがって。
「じゃあ、なにが疲れたんだ？」
『…………』
彼女は一瞬黙った後に、ふうっと息を吐く。携帯越しだからか、妙に艶かしく聞こえたのは気のせいだろう。
『人間関係、もうどーでもいいや……って』
「人間関係？」
その言葉に首を傾げる。
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りこりこ(プロフ) - 小学生の時ぶりにひさしぶりにイナゴのよむきっかけになりました!!ケータイ小説なんかより100倍本当におもしろかったです()鬼いい話でした(TT)ほんとありがとうございました..！！ (2021年1月13日 15時) (
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作者名：十五夜だんご | 作成日時：2020年10月2日 20時
