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「…………」
わからない。わからなかった。豹牙への想いと、霧野への感情が入り混じって、ぐるぐる混ざって、ぐるぐる回って、もうわけがわからなくなりそうだ。
でも、それでも、私が好きなのはーー
「…………っ！」
ちらりと霧野を見ると、彼はまっすぐにこちらを見つめていて。
愛しい人を見るかのような目で、こちらを見つめていて。
熱の籠もった瞳で、こちらをじっと見つめていて。
自信を持って、はっきりと、豹牙が好きだと言えなくなってしまった。
そんな……そんな目で見られたら……私……。
豹牙だって、私にそんな目を向けることはなかった。
あんな視線を受けるなんて、初めてだった。
きゅうっと心臓を鷲掴みにされるような、そんな感覚。
豹牙に恋に落ちたときと、同じ感覚。
霧野から、目が離せない。
そんな私の異変に気づいたのか、彼が一歩、前に踏み出す。
もう一歩、前に進む。
もう、見上げなければ彼の顔が見えないくらいにまで近づいてくる。
それでも私は、彼から目を離せなかった。
一心に見つめ上げてくる私を、彼も見つめ返してくる。
そして微笑みを浮かべると、ふっと視界から消えた。
それと同時に、華奢なのに筋肉質な彼の腕が背中に回される。彼の香りが鼻腔をくすぐった。
「……なあ、A」
私の肩に顎を乗せて、ぽつりと呟く。
「俺、今すごい緊張してる」
そんなこと知ってる。だって霧野の心臓の音、聞こえてるんだもん。……私と同じくらいに早鐘を打っている、鼓動が。
少し、気恥ずかしい。
「でも……それ以上に、すっっっげぇ、幸せだ」
「っ！？」
本当に、本当に幸せそうに、とろけそうな声でそんなことを言うものだから、頭がクラクラしてしまう。
こんな風に感じることはないと思っていたのに。
こんなにも嬉しいことなんて、今までで一度もなかったのに。
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りこりこ(プロフ) - 小学生の時ぶりにひさしぶりにイナゴのよむきっかけになりました!!ケータイ小説なんかより100倍本当におもしろかったです()鬼いい話でした(TT)ほんとありがとうございました..！！ (2021年1月13日 15時) (
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作者名：十五夜だんご | 作成日時：2020年10月2日 20時
