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私は早る心を抑えて、無機質な機械音が変わるのを待つ。
早く豹牙の声を聞きたい。この気持ちを伝えたい……焦る気持ちとは裏腹に、同じ調子のコール音に少し苛立つ。
「……っあ、もしもし……！」
『なんかあったのか？』
焦っているような声を訝しんだ豹牙が、心配そうに問いかけてくる。その優しさが嬉しくて、にやけてしまう。
「……ううん、なんでも。あ、いや、あるっちゃある……かな……？」
『なんだそれ』
きっと彼は私が電話をかけた理由がわかっているのだろう。向こうもすこしそわそわしている気がする。
私は深呼吸して、心を落ち着かせる。暴れる鼓動を、鎮めさせる。そう、うまくはいかなかったけれど。
どうしよう、なんて言おう？
いざ言おうとすると、言葉が出てこない。
私も好きだよ？
付き合ってください？
ずっとそばにいてほしい？
どれもありきたりの言葉のように思えてしまって、混乱してくる。
『……ゆっくりでいい』
彼の優しい声音が鼓膜を震わせる。驚いた。彼はこんな声も出せるのか。
私はうん、と言い、目を閉じる。すると急速に頭が冴えてくる。
そしてそのまま、彼の名前を呼ぶ。
会いたくてたまらない、彼の名を呼ぶ。
恋しくてたまらない、彼の名前を呼ぶ。
豹牙、と彼の名前を呼ぶ。
「最後まで、ちゃんと聞いてほしいの」
『……わかった』
恋する人の心はジェットコースターのようなもの。たった一つの言葉で舞い上がり、たった一つの言葉で地に落ちる。
たった一瞬の動作に胸を躍らせ、たった一瞬の動作で悲しみの底無し沼にはまってしまう。
だからこそ、言葉は慎重に選ばなくてはならない。
だからこそ、慎重に行動しなければならない。
神様が与えてくれた、奇跡みたいなチャンスを捨ててしまわないように。無駄にしてしまわないように。
「私ね、嘘ついてたの。豹牙にも、自分自身にもーー」
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りこりこ(プロフ) - 小学生の時ぶりにひさしぶりにイナゴのよむきっかけになりました!!ケータイ小説なんかより100倍本当におもしろかったです()鬼いい話でした(TT)ほんとありがとうございました..！！ (2021年1月13日 15時) (
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作者名：十五夜だんご | 作成日時：2020年10月2日 20時
