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触れた唇から彼の体温が伝わってくる。あいつとは違う、キス。
まさかあいつ以外の人とこんなことをするだなんて思ってもいなかった私は驚いて、固まる。けれど嫌では、なかった。
ゆっくりと霧野が唇を離す。こちらを見る。バツが悪そうに頭を掻き、
「…………ごめん」
謝ってくる。
それに私は、なにも言えなかった。彼の顔を見ると、ちゃんと、いや、ちゃんとって言い方はおかしい気がするけど、ちゃんと私のことが好きらしい。
私は彼から視線を逸らしてから、だいじょうぶ、と答える。私を好きでいてくれる人が、こんなにも近くにいるとは思わなかった。
こんな私を好きになるような物好きなんて、あいつくらいだと思っていたから。霧野のその想いは、嬉しかった。
それに。それに形だけの“恋人”だったけど、カモフラージュだったけれども、彼とは他の人よりも長い時間一緒にいたのだから、きっと霧野は私の外見じゃなくて中身をちゃんと見て好きになってくれたんだと思うから。話したことのない人に告白されるのとは、わけが違う。
だから私は、彼に「ノー」とは言えなかった。
あいつ以外に初めて、ちゃんと私を見てくれた人の好意を否定するなんて、できなかった。
「…………」
そっと彼と重ねた唇に触れる。まだ、あの感触が残っている。豹牙とは違う、優しいキスの、感触が。
とそこまで考えてしまってから、ぶわあと顔に熱が広がる。
あのときの霧野は……いつも以上に、かっこよかった。どうしてかはわからないけれど、かっこよく見えて。胸のあたりがキュッてなって、ドキドキしてしまって。
私が好きなのは、後にも先にも豹牙だけだってあれだけ思ってたのに。私、もしかして、霧野ことがーー
「…………」
でも、そうしたら豹牙は？ 彼はどうなる？ あれだけ、私のことを想ってくれている彼はどうなる？
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りこりこ(プロフ) - 小学生の時ぶりにひさしぶりにイナゴのよむきっかけになりました!!ケータイ小説なんかより100倍本当におもしろかったです()鬼いい話でした(TT)ほんとありがとうございました..！！ (2021年1月13日 15時) (
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作者名：十五夜だんご | 作成日時：2020年10月2日 20時
