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雪村豹牙、か。
きっと彼とも、花火を見たことがあるのだろう。それを思い出すのと同時に彼の冷たい言葉も思い出してしまって、また傷ついてしまったのかもしれない。
もう何年も会っていないのに、これだけ彼女から愛されている雪村は幸せ者だろう。けれどもそれを彼は理解していない。
すぐそばにいる俺が、こんなに好意を寄せているのにも気付かずに、ひたむきに雪村を思い続けているこの彼女は、どれだけすごいんだろう。
そして……どれだけ、苦しいんだろう？
「…………」
そんなことは俺にはわからない。もしかしたら、全く苦に思っていないかもしれない。だけど。
だけど、今の彼女は、今にも消えてしまいそうなほど、壊れてしまいそうなほど儚い。
「…………」
考えるよりも先に、体が動いた。彼女の背後に周り、ゆっくりと、首に手を回す。肩を抱きしめる。
驚いたようにAがこちらを見るが、俺はそちらを見ずに花火を見上げる。
「……綺麗だな」
「……うん」
彼女は俯き、そして再び花咲く夜空を見上げる。そっと俺の腕に触れてから、
「綺麗、だね」
呟いた。
いつもよりも近い位置から聞こえるその声に、胸が高鳴る。心臓が痛いくらいに脈打つ。ぴったりとくっついている彼女に聞こえていないか心配になるくらいに、ドクンドクンと鳴る。
いっそのこと、伝わってしまったらいいのに。いや、でもそれは恥ずかしい。
一層大きな花火が打ち上がり、夜空を照らす。ラストの花火。
それっきり静まりかえり、花火の、祭りの終わりを告げる。ついさっきまで棒立ちになって花火を見ていた人も歩き始め、屋台からは売れ残った品を格安で売り出す威勢のいい声が響く。
だが、俺は彼女を抱きしめたまま、動かなかった。
「……あの、霧野？」
「…………」
「ええっと、その、もうそろそろ、離してほしいなーって……」
「…………」
少し恥ずかしそうにこちらをちらちら見ながら言う。
「ちょっと、聞いてる？」
「…………やだ」
「だからその、周りの視線が……」
「もうちょっとだけ、いい？」
「……ぁう……」
Aは恥ずかしそうに唸ったが、俺が少し抱きしめる力を強くするとそれっきりなにも言わなくなった。
今くらいしか彼女に触れられないから、どうしても離してしまうのが惜しくてわがままを言った。
そりゃあ俺だって恥ずかしいけれども、それでも彼女と二人っきりでいられるこの時間が、嬉しくて。
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十五夜だんご - Raiさん» ありがとうございます。始まって一か月以上経つのに相変わらず無名な作品ですが、よろしくお願いします。 (2020年9月20日 19時) (
レス) id: 55db7e7529 (このIDを非表示/違反報告)
Rai - やり方はそのまま画面にペースト、編集パスワード、通常検索など出てくると思います (2020年9月19日 17時) (レス) id: ccf4aab007 (このIDを非表示/違反報告)
Rai - 初めまして霧野君かっこ良く好きで楽しみにしていますもし良かったら参加可能でしたら嬉しいです「 https://uranai.nosv.org/u.php/event/kouooue/」「あなたの小説読ませて下さい。」 (2020年9月19日 17時) (レス) id: ccf4aab007 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五夜だんご | 作成日時：2020年8月13日 18時
