影山(弟)は実はチート。No.2

稲荷崎 ページ6

笛の音が鳴り響き、さらなる緊張感に包まれる。
……いや、それは “こっち” だけか。

相手は稲荷崎。
なんとも言うが、IH準優勝の優勝候補だ。
堅実さはねぇ。
烏野や条善寺と同類の、遊ぶプレーだ。

最初のサーブは宮侑。
ジャンフロとスパイクサーブの二刀流。
歩数で見分けられるが、ジャンフロもスピードが速い。
変化もデカい。オーバーでとる。
セットアップは丁寧。
オーバーでのセットアップにこだわりがある。
しゃがんでセットしたボールは決定率が高い。要注意。

一、二、三……六歩。
スパイクサーブ。
コントロール力が高いため、ライン上に置いてくる可能性も高い。
守備範囲を伸ばせ。
ギリギリまで。
「白布さん、全力で走ってください」
セッターの邪魔はさせねぇ。
俺が守る。

ダンッ＿＿！

左、サイドライン。
「工っ！」
速い。威力もあるだろう。
とれるか？

ドッ＿＿！

鈍い音。
「フォロー！」
少し後ろに飛んだが。
「オーライ」
高く上がってるから問題ねぇ。
エンドラインからのセットアップ。
及川さんの超ロングセットアップよりは簡単だ。
全員が助走に入る。

……ここは。
「川西さん」
センターのファーストテンポ。
エースに頼るのは、ピンチのときだけだからな。

スパッ＿＿。

ピッ＿＿。

……少し低かった。修正。

一度天童さんと交代し、再びコートに入る。
次のサーブ、銀島結。

タッ＿＿。

クソ、前か。
宮侑のサーブを警戒した。
五歩前、二歩左。

トッ＿＿。

回転がかかった。もっと丁寧に。

ズダンッ＿＿！

今のところ一発で決まっている。
向こうの守備が完成してねぇ。
今のうちに畳みかけねぇと後半がしんどい。
北信介。
一気に守備を完成させるから “怖い” 。
北信介が出てくるまでに余裕を作っておく。
そのためにも、序盤のレシーブは丁寧に、正確に、慎重に。

牛島さんのサーブはアウト。
まだ肩が温まりきってねぇんだろう。

次のサーブは角名倫太郎。
笛が鳴ると同時に打ってくる。
だから、笛が鳴る前に守備位置に構え、五秒程度数えておく。

トッ＿＿ふわ＿＿。

よし、想定通り。Aパス。回転もかかってねぇ。
……完璧。
前衛のスパイカーは二人。誰を使う？
まだ打ってねぇ五色か、安定した得点力のある大平さんか。

ストン＿＿。

うお、ツー？
うっわ出し抜かれた。
いくらこっちの得点といえど悔しいな。
「白布ナイス〜！全然わかんなかったヨ」
「いえ、影山なら……なんだその顔」
「……俺も騙されたっす」

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