ホテルにて ページ25
……こうなることは予想していた。
二セット目は、はじめに巻き返されそうになったがどうにか耐え、ストレート勝ち。
中でも今日の工の活躍は大きかった。
個人得点数で言えば、牛島さんにも劣らねぇ。
いつもならボロ負けだが。
……だから。
「うぅ、A、ごめん……」
IH決勝戦の俺のように電池が切れたって、おかしいことじゃねぇ。
「まだミーティングあんだろ、寝るなよ」
ただ、問題は俺がこいつを運んでいること。
とてもじゃないがキツい。
勘の良い人なら気づいただろう。
こいつと俺の身長差は約三十センチ。
俺もそれなりに動き、井闥山と一試合した後だ。
……脚が持たねぇ。
それなりに鍛えている自信はあるが、自分より三十センチも上のやつを支える想定はしてねぇ。
短いはずなのに長く感じる廊下を抜け、見慣れた部屋に入る。
あぁ、ついた……。
ボス、という気持ちの良い音を求めて布団に倒れ込む。
……疲れた。肉体的に。
だめだ、俺が寝る。
ミーティング。
ふ、と息を吐いて切り替える。
「よし、工。行くぞ」
「え、ちょ、待てって!__うわっ」
背後から布団の音が聞こえたと思えば、今度は工が倒れ込んでいる。
……こいつ動けねぇのか。
完全に忘れていた。
有難いことに、私立でお金のあるらしい白鳥沢はバレー部にも多めの資金が用意してある。
おかげさまで、ホテルの部屋は二人一部屋。
ミーティング用の広い部屋まで借りられている。
最初は嬉しかったが、今はそれでさえ恨めしい。
もうこいつを運びたくねぇ。
「A、俺はこのミーティング終わったら、すぐ寝る」
「おう、そうしろ。って言いたいところだが、飯だ」
「あぁ……」
飯は一階でバイキング形式。
こりゃあ命をかけねぇと、だな……。
「すんません、遅れました」
戸を開けるとそこにはもう先輩が全員揃っていた。
「おせーぞー!……なんてな」
「エータくん優しー!にしても、よく運んだよね……俺絶対ムリ〜」
予想以上に優しく声をかけてくれる瀬見さんと天童さん。
「今回のMVPは二人だからな。多少遅れても仕方がないだろう」
「五色はただのスタミナ不足ですけどね」
厳しい白布さんのセリフに対し五色は。
「ぐぬぅ……」
どうにか、ぐうの音は出たらしい。
「あれ、監督は……?」
「遅刻チュー!」
その天童さんの言葉通り少し遅れてきた鷲匠監督は、今日の試合動画を配って、すぐ飯にするように言った。
……ちなみに飯も部屋に用意してくれていた。
ありがたい。
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ゐほ(プロフ) - ちぃさん» ありがとうございます!!ストイックな感じを出したかったので上手く伝わって嬉しいです……!応援に答えられるように頑張ります!! (3月1日 19時) (レス) id: 322cc096fc (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - めっちゃ大好きですこの小説!ボールを綺麗に上げることだけじゃなくセッターが上げやすいレシーブにするっていう自分への厳しさ?みたいな感じがすごく好きです!!毎日更新楽しみにしています。応援してます! (3月1日 18時) (レス) @page17 id: 4eb3235a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゐほ(プロフ) - はるさん» ホンマですか?!めっっちゃ嬉しくてモチベ激上がりしてます!!最近更新遅いので前作紹介の下の公開予定の三十分後が目安になってます💦 (2月26日 22時) (レス) id: 322cc096fc (このIDを非表示/違反報告)
はる - ガチで大好きです‼️毎回毎回最新話出てるかな?って確認してます! (2月26日 22時) (レス) @page15 id: fca3faa208 (このIDを非表示/違反報告)
ゐほ - ミミさん» 春高編、気合い入れていきますよ!! (12月28日 21時) (レス) @page2 id: 3242fac10c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゐほ | 作成日時:2023年12月27日 10時