悔と良と名 ページ24
五色side
「……っはぁ……っ」
やばい、息が。
さっきからほぼ連続でサーブを打ち続け、もうその回数は両手では数え切れない。
得点板を見れば十七点差。
……しっかりしろ、普段なら、このくらいは平気だろ。
体力もAほどではないけどつけた。
筋肉トレーニングもした。
疲れも溜まってない。
百本サーブも一切サボらなかった。
じゃあ、なんで。
熱はない。体温は朝に計った。
調子も悪くない。むしろ良い。
「工」
「なんだよ、ビビるだろ!」
後ろから声かけてくんなよ……。
俺の言葉を無視したAの指示に合わせて動く。
スクワット、肩回し、首回し、緊張状態からの脱力。
「熱は」
「ない」
体温はいつも通り。
手のひらも、いつも通りAのほうが少し温かい。
それを十分に確認したAは珍しく口角を上げた。
「……よし。工。大丈夫だ」
大丈夫。
そう断言されると妙に息が落ち着いてくる。
なるほど、大丈夫だ。
「お前の息があがってんのは、調子が良くていつもより高く跳んで、強いインパクトを加えているからだ。安心しろ」
あぁ、だから、あんなに景色が良かったのか。
「おう」
サーブに下がると、ベンチで瀬見さんが構えているのがみえる。
乱れたら交代させる気か。
瀬見さんなら、もっと強烈なサーブを打ち込めるだろう。
このくらいで息は切れないんだろう。
頼もしいな。
こんな状況でも活躍するんだよな。
でも。
いくら、瀬見さんでも、三年生でも。
この場所は、もう少し。
できれば、ずっと。
守り抜かせてください。
こいつのレシーブを、近くで観たいと思うから。
守備で名前を呼ばれるのはAだ。
攻撃で名前を呼ばれるのは牛島さんだ。
実況に名前を呼ばれるのも二人だろう。
……俺の名前が呼ばれる回数なんか、比べ物にもならない。
悔しい。
頼られるのは俺じゃない。
でも、それも簡単に納得できてしまうから、それも悔しい。
笛に合わせてサーブトスをあげる。
良い。
右足から助走し、両足で勢いのまま床を蹴る。
良い。
肩を下げて、肩甲骨からしっかり後ろに引く。
良い。
落ちてきたボールに合わせて、インパクト。
良い。
コースは……"前"。
……良い。
トッ__!
「っしゃああ!」
自分で叫びながらも、会場が沸いているのがわかる。
『サービスエース!!』
『ここに来て渾身の一撃、五色工!何度その名を呼んだかわかりません!恐るべし一年生!』
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ゐほ(プロフ) - ちぃさん» ありがとうございます!!ストイックな感じを出したかったので上手く伝わって嬉しいです……!応援に答えられるように頑張ります!! (3月1日 19時) (レス) id: 322cc096fc (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - めっちゃ大好きですこの小説!ボールを綺麗に上げることだけじゃなくセッターが上げやすいレシーブにするっていう自分への厳しさ?みたいな感じがすごく好きです!!毎日更新楽しみにしています。応援してます! (3月1日 18時) (レス) @page17 id: 4eb3235a56 (このIDを非表示/違反報告)
ゐほ(プロフ) - はるさん» ホンマですか?!めっっちゃ嬉しくてモチベ激上がりしてます!!最近更新遅いので前作紹介の下の公開予定の三十分後が目安になってます💦 (2月26日 22時) (レス) id: 322cc096fc (このIDを非表示/違反報告)
はる - ガチで大好きです‼️毎回毎回最新話出てるかな?って確認してます! (2月26日 22時) (レス) @page15 id: fca3faa208 (このIDを非表示/違反報告)
ゐほ - ミミさん» 春高編、気合い入れていきますよ!! (12月28日 21時) (レス) @page2 id: 3242fac10c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゐほ | 作成日時:2023年12月27日 10時