影山(弟)は実はチート。No.2

開幕 ページ3

ついに春高当日。
IHでベスト八止まりだった俺らにシードはねぇ。
そのため、トーナメント表を見ると二回戦で優勝候補と当たることになっている。
……俺らも “一応” 、優勝候補だが。

他に当たる可能性のある強豪は……。
「あ！音駒と梟谷！うわ。四回戦、鴎台じゃん。井闥山は反対側か……。お、狢坂！」
……全部言いやがった。
工とは一時ギスギスもしたが、試合前まで引きずるなんざ、にわかの如くだ。

「稲荷崎と二回戦目ってのがキツいな」
「ユースに宮侑いたんだろ？ひぇー……」
その “ひぇー” はユースにいたからだけじゃねぇだろ。ナンバーワンセッターだぞ？
オーバーで拾う範囲が広いため、ミドルもリベロも気を抜けねぇ。

「突飛なプレーが飛び出してくるから、烏野と似てるかもな」
「げ、あれブロック飛ぶのしんどいんだけど……」
「ディグも大変だ」
断続的に脳をフル回転させねぇと攻撃を読み切ることができねぇ。

ちなみに俺は今回、控えで、状況に合わせて交代を入れることになった。
魔の三日目は集中力がもたねぇ可能性もあったため心強い。
それに、ぎりぎりまで “飛び道具” を隠しておきたい、と。

牛島さんとのセカンドテンポは予選で見せてしまった。
研究を重ねるチームなら、ファーストまで合わせていることも予想するだろう。
まぁ、俺らの飛び道具はまだあるが。

「それより、シードねぇから順番に勝つしかねぇぞ。一回戦の相手、IHにも出てる」
結果としては一回戦負けだったが、あれば緊張故だと思う。
今回、どんな対策をしてくるかはわからねぇ。
それに、IH初出場だからこそ、情報が少ねぇだろ。
連続で全国に入ってんなら、それだけの実力は備わっているってことだ。
気を抜くことは許されねぇ。

寺泊基希の攻撃力を始め、どのプレイヤーも攻撃力が高い。
リリーフサーバーの層が厚く、繰り出されるサーブの種類も豊富だ。
攻撃は烏野や青城よりは単調だが、その分パワープレーが多い。
俺らと同じスタイル。
パワーで言えば俺らが負けることはないから、いかにしのぐかが大切になる。

だが、一回戦は山形さんが出場するため、俺に出番はねぇ。
……分析に専念するか。
外からと中からじゃ得られる情報量が違う。
それを伝えるのがリベロの仕事であり、ベンチの仕事だ。

「集合」
どこからか聞こえてきたその声に返事を返し、会場へ向かう。
名前を呼ばれ、整列をすると高らかに笛が鳴り響いた。

ピー＿＿！

春高、開幕＿＿。

楽→←なぜ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す