影山(弟)は実はチート。No.2

視 ページ17

俺をリベロにしたのは誰だったか。
身長を理由に見捨てた、クラブのコーチか？
強さを教えてくれた、和与くんか？

そんなこと、もう覚えてねぇ。
誘ったのは周りの大人だったとしても、この道を選んだのは間違いなく俺だ。

＿＿『お前はリベロだ』。

だが、こいつは、俺をリベロに仕立て上げた。
「上等だ、一生俺の背中をみてろ」
「すぐ追い抜いてやる！」

ピー＿＿！

俺はこいつの前には居ねぇ。
リベロはスパイカーの後ろにしか居ねぇ。
故に、こいつが俺を前にいる人間だと思っているのは何かの間違いだ。

ドドッ＿＿！

実際、今、俺はコートに立ててねぇし、手を伸ばしても届く距離にあいつは居ねぇ。
クソ。
何だ。
何が足りない。

スパッ＿＿！

トッ＿＿。

完璧ならそこに立てんだろ。
探せ。
何かを。
足んねぇ。
もっと。
強く。
速く。
上手く。
足んねぇ。
何も足りてねぇ。

ドン＿＿！

ズダッ＿＿！

……決めた。
全部だ。
ここにあるもの、全部、俺が視る。

ピッ＿＿！

まだまだ試合は序盤。
時間はある。

サーブ、星海光来。
駆け引きが上手く、空中戦は二メートル相手にも有利に挑む。
身長約一六五センチながらも最高到達点は今大会トップレベル。
テクニックに長けた選手だ。
そして、そのジャンプ力は……。

ドン＿＿！

床を"蹴る"力の強さにある。
体重移動は前より上の意識。
膝をしっかり使って体全体で跳ぶ。

ドッ＿＿！

高いジャンプは高い打点を生み出し、高い打点は鋭利なサーブを生み出す。
当たり前の事だが、これが難しい。

トッ＿＿。

山形さん。
重心は左足。
左膝の前、きれいなフォームでボールを受け取る。
斜め右にゆるく回転のかかったAパス。
「ナイスレシーブ！」

ふわ＿＿。

白布さん。
姿勢はまっすぐ。
垂直にボールを受け取り、姿勢を崩さねぇままスパイカーに届ける。
クソ、完璧。読めねぇ……が、手首は正直だ。
レフト。

しっかりボールを見留めてからそこに走り込むのは工。
助走距離を確保し一歩目を小さめに踏み込む。
そこから徐々に歩幅を大きく、重心を低くしていく。
グッとタメを作り、勢いよく空中にとび込む。

スバンッ＿＿！

相手のバンチブロックよりきわどいストレートにまっすぐ刺さるボール。
昼神幸郎、バンチブロックの軸。
さっきも上手くサイドステップを使って揃えてきた。
跳ぶ瞬間は長い腕を大きく振って勢いを生み出す。
「ナイスキー！」

もっと、もっと、よく視ろ。
選手の数だけ、癖が、工夫が。

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