影山(弟)は実はチート。No.2

意 ページ15

川西side

「俺、ここに来れてよかった」

ゾッとした。
元より圧倒的な実力を持ち、相手を抑え込むような威圧感を持っていた影山。
牛島さんと似たようなところがあって、客観的な自信を持つタイプだと思う。

身長は確か百五十だったか……。
プレーや存在感から忘れられがちだけど、男子の平均身長からしても相当小さい。
でも、本当にこの身長は詐欺だ。

今までは相手を抑える威圧感。
今は仲間をも飲み込む威圧感。

コート内の奴らも感じているだろうほどのオーラ。
____誰だ。ここに居るのは。

そのセリフは隣りにいた俺以外には聞こえていないだろうけど。
ほら、白布がこっちを確認した。

影山はできたプレイヤーだと思う。
どんなときでも目標を見つけて行動しているし、現に一年ながらベストリベロ賞だって夢じゃない。
それでも先輩というものを尊敬し、自分の欠点に向き合い続けるなんて、俺にはできない。

『悪い、ちょっと試したいことがあるから最初レシーブ乱れるかもだけど良いか？』

試合の一番最初。
山形さんが珍しく俺らに守備への協力を求めた。
山形さんも、もちろん優秀なリベロで、技術面も精神面でもたよれる先輩だ。

そして、影山は気付いただろうけど、後輩から学ぶ姿勢をとれるのも普通じゃない。
先輩は先輩で、後輩は後輩だ。
その威厳を捨ててまで上を目指すなんて、相当なバレー馬鹿だ。

できるとしたら、烏野の九番とか十番とか。
……まぁ、五色には無理だろうな。

あと、影山はどう思っているのかはわからないけど、この魔の三日目をフルで山形さんを使うのも鷲匠監督なりの意味があるんだと思う。
普段は人の感情に敏感なのに、バレーになると生真面目だから、本人は深く考えようともしてないんだろう。

多分、鷲匠監督が山形さんを影山に見せようとするのは、実力云々の問題じゃない。

"先輩が繋いできたリベロを、真正面から受け継げ"。

山形さんと影山はタイプの全く違うリベロで、どっちも必要とされるべきリベロだ。
互いに持っていない部分を補い合っているというか、ここまで凹凸の噛み合うリベロの組み合わせはこの二人以外にないと思う。

"山形さんが影山から受けている刺激を見て、影山も刺激を受けてほしい"。
これは、山形さんへの無情な信頼と、そのあとを担う影山への無言の圧。

影山は向上心を持つ優秀なリベロだ。
だから学べ。
最後に大きな先輩の姿を存分に見せてやる。

これが山形さんと監督からの脅迫(しんらい)だ。

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