【イナGO】囚人と暗殺者ー５ー (ページ6)

今日:1 hit、昨日:8 hit、合計:31,942 hit

２０６STORY ページ6

～神童サイド～

俺がそう言うと、案の定両親は表情を歪めた。

それでも俺は感情をぶつける。

神童「俺のことを勝手に捨てたくせに！！！

どれだけ俺が苦しんだと思ってるんだ！！！

戻りたくなんて……」

母「黙りなさい、拓人！！！」

神童「ッ！？」

今度は母さんが怒鳴った。父さんは顔をしかめて仁王立ちしている。

母「私たちはね、好きで拓人を捨てたわけじゃないの。

だからこそ、今はすごく後悔している。

私たちは、拓人とやり直したいのよ……どうしてわかってくれないの？」

それはこっちのセリフだ………どうしてお前らは俺の気持ちを理解してくれない？

一度俺をなんの躊躇いもなく捨てたような親の財閥を継げなんて、嫌に決まっている。

俺を見つけてさぞ嬉しかっただろうな……？

都合のいい『後継ぎ』を、息子という名の『人形』を、取り戻せたんだから……。

神童「……俺はもう、神童財閥の後継ぎなんかじゃありません。

自分の意思で生きていきたいんです……たとえ、どれほどつらい目に遭おうとも

絶対に負けない……」

霧野たちがいれば、俺はどんな困難にも耐えられる。

仲間が笑えば俺も自然と笑顔になる。

仲間が苦しんでいたら、その苦しみをともに分かち合いたい。

罪に塗れてしまった両親のもとで、財閥の後を継ぐなんて……。

父「…………そうか。

ならば、仕方ないな」

父さんが手を叩くと、サングラスの男が再び動いた。

突然俺を抱えてリビングを出ると、回廊の赤い絨毯の上をスタスタと歩いていく。

神童「おい！どこに……」

ギギイィィ…………

木製の扉が、軋む音を立てながら開かれる。

そして、俺はその中に放り投げられてしまった。

アイマスクを付けられていた時と同じくらい暗い。それにとても寒くて……。

神童「なっ……」

男「貴方の気が変わるまで、ずっとそこにいて頂きます。申し訳ございません」

バタン！！！

暗闇の中に、一人取り残された。

もうなにも見えない。なにも聞こえない。

今度こそ、誰も助けてくれないのか……？

ああそうだ、きっとこれが普通なんだ。

この冷たく残忍な国で、親に捨てられた一介の子供がまた笑顔を取り戻すなんて………。

俺は、奇跡に奇跡が重なった『だけ』。

ごめん、みんな…………。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

ランキング入りありがとうございます！！！