Story22 ページ23
怒り出したいような、泣いてしまいたいような、笑ってしまいたいような奇妙で複雑な感情が俺の心を支配して飲み込んでいく。
結ばれていたAの黒髪は横になりやすいようにだろうか、今は解かれて下ろしており、それがなぜだかすごく眩しく思えた。黒の瞳は未だ俺に向けられたまま。体が焼かれているようだ、と思った。Aの瞳は熱さを持っていて、それが俺の体を焼いているようだ、と。熱い、熱いと思うのにAの瞳から目を話すことはできなかった。彼女の瞳は俺を引き寄せる引力を持っているのか、と錯覚するほどに俺はAだけを視界に収めていた。
Aだけが住むその世界は哀しいくらいに美しく、恐ろしいくらいに魅惑的だった。
そんな世界に風が吹く。
Aの背後の窓がこの美しい世界を壊すために風を送ってくる。潮風よりも強い陸風が勢いよくAの長い髪をさらう。顔を覆ったその黒髪が俺を引き寄せていた黒の瞳を遮って、俺ははっと我に帰る。
「…また会ったね。」
顔にかかった髪を耳にかけて、笑うAの瞳はもうすでになにかを隠すかのように曇っていてその狂気的な引力を失っていた。自然な笑み。だけど、瞳だけは笑っていないことを、彼女の瞳に魅せられていた俺は気づいていた。
「…偶然?そんなわけないよね?」
笑っている。口元は。目の形は。頰の上がり方は。でも、ただ一つ瞳だけは暗く沈んでいる。
「ちょっかいかけたのはごめんね。謝るよ。って、前も謝ったと思うけど。でもこうやってストーカーみたいに追いかけ回すのはどうかと思うんだ」
いつもと変わらず陽気な声音のまま、でも淡々と言葉を紡ぐA。Aの視線は俺たち全員を順繰りに巡っているのに、彼女の言葉はただ俺だけに向けられているかのように感じられた。そして、一拍置いて俺の目をまっすぐに見つめる。温度のない、冷淡な瞳と対面する。
「はっきり言う。迷惑だ、ものすごく」
その言葉を聞いた瞬間、全身からさっと血の気が引くのを感じた。Aの目が語っていた。もう放っておいてくれ、と。俺の中にくすぶっていた“確信”が、もろく崩れ去った。
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陽羽(プロフ) - まるさん» まだまだガキンチョですよ笑 私も割としばしば自分気持ち悪いな…と思うことがあります。でも、まあ、それほどまでにONE PIECEは魅力的な作品ということです!!笑 学べるうちに学べ、と周りからも言われるので、頑張れるだけ頑張ろう…!と思っています汗 (2016年2月5日 15時) (レス) id: 2b94f0709a (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 受験生でしたか…。私はてっきり成人なさっているかと思っていました。文章から素敵な言葉を紡ぐ大人の方かと…。私はマルコマルコ騒いでいますがいいおばさんですよ。時々自分が痛くなります。学ぶことが可能なうちはたくさん学んで下さい。頑張って!! (2016年1月31日 17時) (携帯から) (レス) id: ab9f95c1b2 (このIDを非表示/違反報告)
陽羽(プロフ) - まるさん» マルコの声、私ももっと低いと思ってました!!…でも、あの高さもまた良し。マルコってだけで、オールオーケー。私はゾロかサンジで言えば…んー…恋をするならゾロだけど、彼氏にしたい!って思うのはサンジさんですかね…。グフフフフ( ̄ー ̄ ) (2015年12月22日 15時) (レス) id: 2b94f0709a (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 私はマルコが大好きですがゾロも好きです。声素敵ですよね。マルコの声は想像と違ってた。もっと低いかと思っていた。ゾロとサンジならゾロを選ぶなぁ。サンジは紳士的だけど女の子にメロリンだから。でもやっぱりマルコです。マルコが一番なのです! (2015年12月21日 16時) (携帯から) (レス) id: ab9f95c1b2 (このIDを非表示/違反報告)
陽羽(プロフ) - まるさん» こんにちは、まるさん!本当ですか!?駄弁るROOMは完全に自己満足でやっているコーナーなので、そう言っていただけて嬉しいです!これからもちまちま更新しますのでよろしくお願いします!二次元万歳*\(^o^)/* (2015年11月22日 15時) (レス) id: 2b94f0709a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽羽 | 作成日時:2015年9月27日 16時