この世界のどこかで【ロロノア・ゾロ】

Story13 ページ14

言葉を発しながら、こいつをもっと知りたい。そう思った。そう思わずにはいられなかった。
陽気な笑顔の裏でAは一体なにを思い、なにを考え、なにを感じているのか。Aの目をしっかりと見つめながら言った俺の言葉に、Aの瞳はまた震えて。その震えの理由は恐れなのか、悲しみなのか、はたまたそれ以外の何かなのか。俺にはさっぱり分からぬままだけれど。

黒より暗い底の見えない強い瞳が俺を捉えて離さない。言葉を発しようとしては、言うべき言葉を見つけ出せずに閉じられるAの薄い唇が浅い呼吸を繰り返している。


「いい…のかな？」

「…あ？」

「…いい、のかな…」


絡み合っていた瞳が伏せられ、響いたのはそんな力ない声だった。Aらしからぬ不安そうなか細い声が紡ぐ言葉の意味を俺が知る由もなく。

「そんなもん、人に聞くな。
お前が決めろ。お前の人生、お前が決めろ。誰に許可を取る必要もねぇだろ」

わからなかったから、ただ思ったことを言ったAが俺に言って欲しい言葉を理解できない俺にはそれしかできなかったから。

うだうだしたって仕方ねぇ。だったらビシッと決めるしかねぇ。自分の人生、選択肢は多々あれどどれを選び取るかは自分自身で決めるべきだ。その責任を取るのも、自分自身なのだから。

俺の言葉にはっとしたように顔を上げたAは、その後に困ったように笑った。
泣きそうに、笑った。
100%の笑顔ではなかった。
だけど、それは紛れもなく笑顔だった。
さっきのどこか不自然な笑みと違う心からの笑み。それに意識の全てが持っていかれた。俺の周りの空気が、一気に温度を上げた。


「…そっか！そうだよね。なに言ってんだろ、私。
うん、お酒、行こうか！久しぶりだなぁ！」

急に顔をぱっと明るくして、そう告げたA心底嬉しそうに、楽しそうに俺の手を引いて酒場に向かう。そんなAに俺の口角も自然に上がる。
こいつのこういう顔、悪くねぇ。
そう思った俺の心の底で起きた変化に、俺はまだ気づいていなかった。

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