vol.48 ページ6
「大学の時にある美術学部の生徒に出会ったんです。その人は俺より一個年下で、俺と同じ左利き。……斜線を描くと皆と反対になるって言ってたのを今でも覚えています。」
光に初めて会った時、何となく似ていると思った。
具体的にどこがとは言えなかったけれど、それでも似通っていたところはあった。
「それからその人と仲良くなって、今でも仲よくしてるんですけどそれがまた才能のある奴で…。」
「画家さん、ですか？」
「八乙女光、って聞いたことないですか？」
伊野尾さんは一瞬だけ考える素振りを見せたけれど、首を横に振る。
……仕方ないか、外に出られないんだもんな。
嫌な質問しちゃったな、と後悔した時には既に遅かった。
「まぁ…その、俺も最初は順調でよく色んな方から褒めてもらったり一緒に仕事をしたいなんて有難いお声掛けもあったんです。だから最初の頃は自分の力を過信していたくらいです。」
タイムリミットが迫る中で、窓の外には俺の嫌いな夜が訪れていた。
だけど今日は何故か怖くない、やっぱり人と一緒に居るからだろうか。
「でもある時から急に書けなくなって、今に至ります。……綺麗な物を見ても綺麗以上の感情が無いんです。そんな時にブログを始めたんです。」
「『青空日和』！」
二人の声が重なって、室内に響いた。
思わずハモってしまって驚くも、また二人で笑い合う。
「そこでアオさんが、伊野尾さんがコメントをくれて。お世辞抜きで元気が出たんです。まだ俺も捨てたもんじゃない。まだ大丈夫だって。」
「俺、知らない間にそんなことしてたんですね。」
ポツリと呟いて伊野尾さんは呆然と遠くを見つめる。
何処を見ているのかは分からなかった。
少なくとも俺の目をみていないのは分かっていたけれど。
「少し前、その画家の友達が個展を開いたんです。才能を見せつけられるようで正直、気乗りはしませんでした。」
「あ、それってブログに書いてたやつですか？」
「あぁ……確かに書きましたね。そうです、それです。」
ニコニコと微笑む伊野尾さんの表情を見るとなぜか胸が苦しくなった。
別に俺が何かをした訳ではない。
だけどブログを読んでくれている人が、俺を認識してくれている人が居るのだと思うと、やっぱり嬉しくて。
「『fine』の意味、知ってます？」
相変わらずニコニコしたまま、伊野尾さんは答えた。
「『終わり』ですよね？」
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天凪(プロフ) - Blue Whiteさん» たくさんの嬉しいご感想ありがとうございます。そんな風に思っていただけるだけでも幸いです。お礼を言うのはこちらの方です。本当にありがとうございます、これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2017年9月9日 0時) (
レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - blue catさん» こちらこそ素敵なご感想ありがとうございます。最後まで読んでくださって、更にはご自身の体験に重ねて考えていただけるなんて本当に光栄です。このお話が何かのきっかけになれば幸いです。応援しています、頑張って下さい！ (2017年9月9日 0時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
Blue White(プロフ) - はじめまして。このお話はすごく文章が綺麗で、物語にのめり込みながら読んでいました。とっても感動できる作品でした。「ありがとう。」って言いたいです。これからも頑張ってください。応援しています。 (2017年9月7日 18時) (レス) id: 96f5815679 (このIDを非表示/違反報告)
blue cat(プロフ) - 本当に感動しました！！私自身、ずっと”才能”という言葉に囚われていました。今でも、逃げてしまいたくなるくらい、泣きたくなるくらい、周囲との力量の差を感じることがあります。でも、この小説を読んで自分の気持ちと向き合おうと思いました！有難うございました！ (2017年9月3日 20時) (レス) id: 2b68782549 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - くるみさん» お返事遅くなってすみません…！嬉しいご感想本当にありがとうございます。皆様の応援あってこその作品でした！またいつでも覗きに来てくださいね！ (2017年6月6日 18時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
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