vol.57 ページ15
雨、曇天、ランプ、蛍光灯、椅子、廊下、紙とペン。
お世辞にも上手いとは言えない字でノートの余白を埋めていく。
空、駅前のプリン、海の砂、カレンダー、ティッシュ、中庭。
希望、夢、感謝、青空、奇跡、自信、応援。
そのペンは一度も止まることなく余白を勢いよく埋めていく。
涙、後悔、諦め、感傷、優劣、才能、卑下、挫折。
俺を助けてくれてありがとう、なんて君は言っていたけれどそれは違う。
本当に助けられたのは俺の方だ。
本当に感謝をしなければ俺の方なのに。
それなのに言いたいことが、考えがまとまらない俺は上手く言えなかった。
まだきちんと伝えきれていない思いがあるのに。
悔しい、なんて言い方は後悔しているようで好きじゃない。
だけど今の自分をその言葉以外で表すことができない。
俺はきっと無力なんだ。
だけど無力だからこそ、どん底に居るからこそ、もう何も失うことはないという強さを知った。
逃げてばかりいた。
このまま逃げ切れるなんて思っては居なかった。
だけど逃げる以外の方法が思いつかなかった。
どうしよう、どうしよう。
出口の見えない一方通行のはずの道で迷子になっていた。
そんな暗い道に光を当ててくれたのは誰だ？
サラサラとペンが紙に走る音だけが空間を支配していた。
もうあの胸の高鳴りは聞こえない。
目の前の紙と一対一で、俺は俺なりの決着をつけようとしていた。
途中まで書いてはペンを止め、少し考えて新しいページを開く。
少し自分の思い通りにならなかっただけで何だって言うんだ。
一発で上手く行かない事なんて世の中に掃いて捨てるほどあるじゃないか。
やっと気づいたんだ。
俺は書けなくなってしまったんじゃない。
自分の思い通りにならない事が、気に入らなかっただけ。
その幼稚な過ちに気付くと、不思議とペンは自分で走ってくれた。
まるで俺の何かを肯定してくれているみたいに。
書けなくなってしまったと思い込んでいた俺は、やっぱり弱虫だったんだ。
全てが怖いほどに上手く行っていた俺は、挫折なんて言葉とは無縁だった。
だから挫折を経験して、たった一度の挫折で諦めそうになって。
今思えば本当に馬鹿みたいだなって思える。
上手く行っている人が羨ましくて。
自分はどうせ何も出来ないんだって、自分の方からふさぎ込んでいた。
だけどその蓋を外してくれたのは、やっぱり君だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 265人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天凪(プロフ) - Blue Whiteさん» たくさんの嬉しいご感想ありがとうございます。そんな風に思っていただけるだけでも幸いです。お礼を言うのはこちらの方です。本当にありがとうございます、これからも頑張りますので応援よろしくお願いします。 (2017年9月9日 0時) (
レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - blue catさん» こちらこそ素敵なご感想ありがとうございます。最後まで読んでくださって、更にはご自身の体験に重ねて考えていただけるなんて本当に光栄です。このお話が何かのきっかけになれば幸いです。応援しています、頑張って下さい！ (2017年9月9日 0時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
Blue White(プロフ) - はじめまして。このお話はすごく文章が綺麗で、物語にのめり込みながら読んでいました。とっても感動できる作品でした。「ありがとう。」って言いたいです。これからも頑張ってください。応援しています。 (2017年9月7日 18時) (レス) id: 96f5815679 (このIDを非表示/違反報告)
blue cat(プロフ) - 本当に感動しました！！私自身、ずっと”才能”という言葉に囚われていました。今でも、逃げてしまいたくなるくらい、泣きたくなるくらい、周囲との力量の差を感じることがあります。でも、この小説を読んで自分の気持ちと向き合おうと思いました！有難うございました！ (2017年9月3日 20時) (レス) id: 2b68782549 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - くるみさん» お返事遅くなってすみません…！嬉しいご感想本当にありがとうございます。皆様の応援あってこその作品でした！またいつでも覗きに来てくださいね！ (2017年6月6日 18時) (レス) id: a99f998358 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
