mine (ページ7)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:5,975 hit

時々、愛ページ7

.

毛布から少しだけ覗かせた頭が可愛い

そんな事を思う余裕がまだあるのか
Aと同じベッドに腰かけて
数ヶ月ぶりに間近で彼女を盗み見た

取り返しがつかなくなったことの発端が自分だって事も、
Aがどんなに辛い思いをしていたのかも
全部わかってるつもりで、分かっていなかった

先輩と最後に話した時の会話を思い返す
枷は、僕にも付いていた

「…言い振らしてるの、先輩ですよね」

「…あの子、道枝くんの大事な子なんだね。
　でも付き合ってないんでしょ？」

「今そんな話どうでも…」

「好き同士じゃないって、嘘なの」

しまった

仲の良い友達にも明かした事のないこの感情を、
一番面倒な人に勘付かれたと覚悟を決めた。
が、それはどうも違った

「話したのは、連絡先のことをAちゃんから
　断られた、どういう心境の変化なのかなってだけ。
　勝手に厄介な作り話が尾を引いただけでしょう」

「発言に責任持ってくださいよ」

「でも噂は事実になりつつあるよ」

「どういう意味ですか」

「あの子が君に気があるって、
　あの一件でよぉく分かった」

何を言ってんだと睨んだ形相を急いで戻す
悲しいことにAから恋愛感情を受け取ったことは
1ミリもない

違うのに

好きなのは、僕の方なのに。

撤回できないでいると、
先輩が声を1トーン下げて言い放った

「半端な気持ちでいたんでしょ」

もう何度再生しただろう
瞼を上げると目の前の白いシーツの皺が飛び込んでくる

このまま時が止まればいいのに。

本気で思った

ふたりで遠くまで逃げよう

誰も何も知らないところまで

刹那、閉じられた先の睫毛が揺れる
泣いているわけではないのに
浮かぶのは彼女の悲しい顔ばかりで、
たとえこの距離でいられたとしても
何もしてあげられないのだと知った

時間が経ちすぎた

確かに恋愛感情は抱いていたけれど

それと近しい、もっと使命感のようなものが渦巻いていたのも事実だった

彼女を守ろうとする気持ちさえ捨てなければ

赦されるような、気がしていた

.