15.最後の夜 ページ9
忘れられないほどユチョンに愛されて、私達はベッドの上でじゃれあってた。
くすぐったりくすぐられたり…。
幸せな時間だった。
ユチョンの背中をクルクル指でなぞりながら、さっき気になったタトゥーに触れた。
女の人の顔。
意味があるのか無いのか、何げに聞いてみた。
｢ねぇユチョン、このタトゥーのモデルはいるの？｣
そう聞くと、ユチョンはうつぶせのまま答えた。
｢ん、あぁ…、オンマだよ。母親の顔｣
衝撃だった。
｢そ…なんだ｣
日本の意識では母親の顔をタトゥーにするほどの男性はそうそういない。
ましてや私は、韓国男性の家族愛、特に母親愛を知らなかった。
｢お母さんの事、好きなんだね…｣
なんて言っていいか分からず、こんな事を言ってしまう。
｢そうでしょ、Aは好きじゃないの？｣
｢え、あ、好きだよ？｣
でも好きの度合いが違うような…。
そのなんとも気まずい私の態度に気づいたのか、ユチョンが話し始めた。
｢あー、えっと…、俺の両親離婚してて…、母親が頑張って俺と弟の事育ててくれたんだよね｣
突然のユチョンの話にハッとなった。
｢オンマと3人でアメリカに行ったけど、大変だったんだよね、きっと。
アボジ、あ、父親ね。結局アボジの力も借りたんだけど、ほんと苦労させたみたいなんだ…｣
｢そうなんだ｣
｢うん。でもアボジは少し前に死んでしまったけど…｣
｢えっ…？あ…｣
気の利いた事が言えない。
｢ふっ、いいよ(笑)昔のことだし、アボジの事は今でも尊敬してるよ｣
ユチョンの過去を聞いて、切なくなった。
でもこれ以上聞けない。
その代わりに抱きしめた。
｢本当に家族の事が好きなんだね｣
｢ん…｣
抱きしめた私の腕を握り返してくれる。
｢今度、オンマにAを会わせたいな｣
嬉しい言葉…。
彼の家族に会わせてもらうのってすごく嬉しい事、分かってんのかな？
｢うん、ぜひお会いしたいな｣
くるっとユチョンは向きを変えて私を見上げる。
｢うん、きっとオンマも気に入ると思うよ｣
ふふっと見つめあって、軽くキスをした。
｢話してくくれてありがとね｣
そっとユチョンの頭を撫でた。
目をこするユチョン。
｢眠い？…｣
頭を撫でながらユチョンに聞く。
｢ん〜、でももったいない…｣
｢ゆっくり寝て？｣
｢ん…｣
そうして私達は抱き合いながら、眠りについた。
韓国最後の夜、とても充実した時間だった。
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作者名：いもたろ | 作成日時：2015年1月17日 22時
