4.過去の事 ページ4
滑らかなピアノの音。
低くて甘ったるいユチョンの歌声。
次々に溢れてくる切ない言葉達と、ユチョンの優しい顔。
原曲をよく知らなかったけど、こんな歌詞だったんだ。
ただ聴いてたつもりだったけど、その雰囲気がたまらなく切なくなって、涙があふれてしまった。
♪ あなたに ただ逢いたくて ♪
ユチョンが最後を歌い終わった頃には、わたしの顔は涙でぐしゃぐしゃになってしまっていた。
「えぇ〜、A感動した?」
笑いながら私の手を握ってきた。
「う〜っ!!すっごいよかったぁ〜!」
涙を片手で必死に拭っていると、優しく握られていた手をぐいっと引っ張られ、ユチョンの座っていたピアノの椅子に座らされた。
「次もちゃんと聴いてて?」
ユチョンはすうっと息を吸うと、
♪ 泣きたい時は 泣けばいいから ♪…
さっきの最愛とは違い、ユチョンはとても切なそうに歌っていた。
時々、私を見ながら寂しそうに微笑んだり。
私は知らない曲だったけど、さっきよりももっと気持ちが高ぶって、ただただ涙を流しながらユチョンを見つめていた。
歌い終わると、少しユチョンも涙ぐんでいた様な気がした。
私の顔を見て、フッと笑う。
「泣き過ぎ(笑)」
指で私の涙を拭って、頭をポンポンしてくれた。
「今の曲は昔5人で歌ってた曲で、ちょっと特別な思いがあってさ…」
頷く事しかできない私。
「Aに聴いて欲しかったんだ」
何度も頷いてやっと一言が出た。
「すごくいい曲だね」
優しく微笑みながらも、ユチョンは切なそうだったから、ユチョンの頭をそっと撫で、ギュッと抱き寄せた。
「よしよし…」
泣いてる子供をあやす様に。
ネットでユチョンの事をあまり見ないようにはしてたけど、5人から3人になった事は私なりにある程度調べていた。
触れられたくない事かもしれないし、下手な事を言ってユチョンを傷つけたくなかったから、私は何も言わずにいたんだ。
「…あったか…」
ユチョンが背中で呟いた。
ユチョンの背中をさすりながら、自分の頰をユチョンの首筋にくっつけて、
「寒い時はあたしが暖めてあげる」
「…うん…」
肩越しにユチョンの鼻をすする音が聞こえた。
そしてユチョンは、過去にあった事を私に話してくれた…。
時々、言葉に詰まりながらも、ゆっくりと。
うん、うんと頷いて、辛かったね、頑張ったね、それしか言えなかったけど、ユチョンがその話をしてくれて私は嬉しかった。
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作者名:いもたろ | 作成日時:2015年1月17日 22時