5.疑惑の出逢い ページ5
ヒゲのお兄さんは、私達に念を押して言った。
「この辺は、観光客を狙う悪い人達が多いんです。僕を信じられないかもしれないけど、本当にちゃんとホテルに送ります。
僕はミンジュンといいます。
何かあったら、あの焼肉店ごと警察に連絡して構わないです。
僕はあそこのオーナーですから」
もう、信じるしかなかった。
あんな恐い思いはもう嫌だった。
私達は頷くと、ミンジュンさんはこう付け足した。
「あ、僕の友達が車に乗ってます。
でも、心配しなくていいです。本当に仲のいい友達ですから」
また少し恐くなった。
ヒゲのお兄さん、ミンジュンさんの車も黒塗りでスモークが貼られていたからだ。
(まさか、さっきの人達とグルだったりして…)
そんな私の心配をよそに、ユキは泣きべそかきながら、ミンジュンさんに抱きついていた。
(おいおい…、ユキ、油断しすぎだよぉ〜…)
不安になり、チラッとミンジュンさんの顔をみたら、本当に心配そうな顔でユキを覗き込みながら、頭をポンポンしてた。
「じゃぁ、すみませんが◯◯ホテルまでお願いしてもいいですか?」
意を決して言った。
ユキはもちろん助手席に案内され、私には後部座席のドアを開けてくれた。
そこには、夜中なのにサングラスをかけ、ニット帽を深く被った男の人がいた。
「ひっ!」
思わず、声を出してしまった。
だって、どっから見ても怪しいでしょ?その格好。
ミンジュンさんが苦笑いして、
「あー…、えっとね、そいつ…、ちょっと変わってるんです。
あ、でもすっごくいい人だから、大丈夫ですよ!」
サングラスの男が、ボソッと日本語で
「こんばんは」
と、声をかけてきた。
(日本語は上手だけど、恐いんだってば!!)
恐怖に感じながらも、ペコっと頭を下げて隣に座った。
車の中では、とにかく動く事ができなかった。
地図を見ながら、景色を見て確認して、本当にホテルに着くのか心配だった。
そんなソワソワしてる私を見て、サングラスの男がふっと笑いながら、
「ホントに大丈夫っすよ」
と、サングラスを外して私の方を見た。
サングラスを外したその顔は、なんか優しそうな顔で、韓国人の男性のイメージとはちょっと違う柔らかい顔だった。
「あ、はい…、すみません」
私はドキッとして、すぐに目を逸らし、なぜか謝ってしまった。
それが2人の出逢いだった。
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作者名:いもたろ | 作成日時:2014年9月11日 14時