26.苛立ち ~YC~ ページ26
ドアを閉めて歩き出そうとした時、鍵をかけた音がしない代わりに、Aの泣き声が聞こえてきた。
安いホテルは壁が薄い。
振り返ってドアの前に立ち、ドアノブに手をかけた。
「A、開けるよ？」
返事は無く、やはり鍵は閉められてなかった。
部屋に入るとバスルームから、シャワーの音とAの泣き声が聞こえる。
ここまで泣くほどの事、一体俺は何した？
ソファーに座って考えてみた。
さっきの流れを思い出して、Aの様子が変わった時…
ジュンスからの電話の時…か？
俺が出なかったから、別の女からの電話だと思ったとか…？
はぁ…。
女の子と付き合うと、こういう事で昔からしょっちゅう問題が起こる。
俺は浮気をした事が今までだって1度もない。
周りがプレイボーイだと勝手に騒ぐから、そのイメージが強くなっただけだ。
確かに職業柄、沢山の女性達に出会う。
だからか、少し仲良くなっただけで熱愛だと噂が立つ。
本当の事は、自分の大切な人達さえ知ってればいい。弁解したりするのはあまり好きじゃないから、信じられなかったり、ついてこれないなら無理って考えだ。
Aもそうなのかぁ…。
今までにないくらい魅力的な人に会ったのに、やっぱりこの問題は尽きないのかな。
モヤモヤしてるとバスルームからAが出てきた。
すごく驚いてるA。
俺はとりあえずこの状況を説明したけど、
「俺、何をした？」
「何もしてないの、ユチョンは悪くないの」
「じゃあ、何であんなに泣いてたの？
何もない訳ないでしょ」
正直苛立った。
「もしかして電話の事…？」
黙るAを見て、ため息が出てしまった。
「あのさ、電話は仕事の人で、Aとの時間を邪魔されたくなかったから出なかっただけだよ？
さっきも言ったけど、気になるなら何でも言って」
「ユチョン違うの、そうじゃないの！」
「じゃあ、何？」
苛立ちを隠せなかった。
だけどその後Aの口から出てきた言葉は、意外な事だった。
あぁ、そんな事があったのか…。
「だから、ユチョンを疑ったんじゃなくて、思い出してしまっただけなの。
そんな事でユチョンに嫌な思いをさせて、本当にごめんなさい…」
俺の方こそごめん…。
言葉にしない代わりに抱きしめて、頭を撫でた。
でもそんな奴の為に泣くなんて、なんかイラつく。完全に俺も嫉妬だ。
「あたしもっと強くなるから」
その言葉で俺の嫉妬心は消えた。
あれ？
ふと下を見たら…！
尻っ?!
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作者名：いもたろ | 作成日時：2014年9月11日 14時
