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なんて安心していたせいかカルパッチョの魔法が届く範囲を完全に忘れてしまっていた。
走って逃げているフィンの左足から血が流れる。そのせいかバランスが取れずその場で転んでしまう。
同時にカルパッチョがフィンに追いてしまう。
「最後の悪あがきってやつか？もう十分に分かっているだろう。僕と君の差が」
カルパッチョは怪我を負ったフィンの左足を踏みつける。
フィンの痛々しい叫び声に身体が震える。
「ザコが僕に逆らうな」
胸を幾度も刺したカルパッチョによってフィンにその傷が移される。
『どうしよう…このままじゃ…このままじゃフィンが…』
息が苦しい。周りからどよめき声が聞こえ始める。
「いいかげんに…」
「ない…」
「ん？」
「これだけは…渡せない」
重い体を無理やりあげるようにしてフィンがその言葉を口にする。そんな状況に僕は目を丸くしていた。
「こんなヘタレな僕でも…弱虫な僕でも…できないんだよ。友達を見捨てるなんて情けないこと…できないんだよ！」
そんなフィンの言葉にはらりと涙が頬を伝った。
気づかなかった。いつの間にか彼がこんなにも成長していたことを。いつも近くにいたくせにずっと彼を"小心者で守らないといけない存在"と錯覚していた。
そんな彼はいつの間にか友達の為ならば痛みを背負ってでも戦うそんな人物になっていた。
フィンが魔法を使うがカルパッチョには届かず、ナイフで胸部を刺されたダメージの跳ね返りにより杖を落とし、倒れてしまう。
「もういい、不快だ。できないくせに頑張ろうとするヤツが1番イラッとくるんだ。その努力がムダだと僕が分からせてやる」
カルパッチョがナイフを首に当てる。まずい、いくらなんでも首はまずい。
自然と瞳に雫が溜まる。そして無意識に胸元に置いていた手を強く祈るように握っていた。
カルパッチョのナイフが彼の首の皮を破りフィンの首から血が流れる。
『…や、やめて……お願い…やめて……っ…助けて、マッシュくん…』
そう願った時、カルパッチョの顔を壁に押し付けて彼はやってきた。
「ムダじゃないよ。僕が来たから。フィンくんありがとう」
マッシュくんの登場と彼の言った言葉に抑えていた涙がポロポロと零れる。声を抑えていると隣にいたレモンちゃんに優しく背を撫でられる。
そこから僕はほとんど泣いていたため詳しくは覚えてない。
ただマッシュくんとカルパッチョの直接対決が始まっていた。
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作者名：しろねこのみみ | 作成日時：2024年3月17日 12時
