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そう思って俯いた。
いくらなんでも今回は当たりが悪かったんだ。
そもそも僕が出ておけば良かった。
そう思いながら鏡を見てみるとそこには血を流しているフィンが居た。
『フィ、ン…?』
唖然としながら鏡を見つめる。
彼は、彼は抗ったの?そう思いながら無意識に身体を軽く乗り出すようにして映し出されている光景を見ていた。
「何しようとした?今。弱いくせに一丁前に何をしようとしたって聞いてるんだ」
ナイフを片手に持ちながらフィンを見下すように言うカルパッチョ。
その光景を見てはそっと彼と戦った時のことが思い出される。
僕も目の当たりにしたことがある。強者が弱者を見下ろすなんて光景を…
「実力の差は君がよく分かっているはずだ。どうせその水晶は取られる。素直に渡して痛い思いをしないほうがいい。君もああなりたくはないだろう?」
彼の言葉に先程カルパッチョにやられた生徒を見る。
酷い有様だと思いながらもし、もしもフィンがああいう風にやられてしまったら…そう思うと怖くて仕方が無かった。
「二度は言わない。さあ渡せよ」
相当怖いはずだろう。耐えられないほどの威圧感や恐怖心。でもそんな中でフィンは水晶を握りしめた。
すると次の瞬間ナイフで自分を刺したカルパッチョの傷が全部フィンに移っていた。
「そんな…フィンくん…」
『っ…カルパッチョの固有魔法は自分の食らった傷を全て相手に返す魔法…相当厄介だよ…』
レモンちゃんに軽く説明をしながらぎゅっとローブの裾を握る。このままフィンがやられるのを黙って見ておくしか出来ない。そんな現状に苦しくなってくる。
しかしそんな僕の心情とは裏腹にフィンはポケットから杖を出した。
「デンジャラス!」
彼のその言葉にハッとする。
何も起こらない中走ってその場を去るフィン。
それを追いかけるようにカルパッチョが歩き出した。
階段を駆け下りたフィン。階段を降りようとしているカルパッチョ。そんな位置関係になった時だった。
「チェンジズ!」
彼の言葉と共にカルパッチョのいる位置が変わる。
フィンが固有魔法を使ってまで逃げた。そんな事実に驚き力が抜ける。
そのままヘタリと座り込むと隣でレモンちゃんが驚いていた。
「Aくん!大丈夫ですか!?」
『う、うん…でも、良かった……まだ安心できないけど…うん、良かった…!』
嬉しくて涙が出そうになる中レモンちゃんに手を貸して貰いながら立ち上がる。まだ、まだ終わってないんだ。
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作者名:しろねこのみみ | 作成日時:2024年3月17日 12時