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くしゃみコアラにこよりをさしたドットくんが当てたのはダーツの的…ではなくマッシュくんの額だった。
「うおっ！」
『ひっ！』
近くにあったフィンの腕に抱きつきながら的にされたマッシュくんを見つめる。ドットくん、絶対わざとじゃん。
「イヒヒヒヒッ。飛びつき腕十字！面白ぇ！ケンカだこの野郎！がっ！ぐぐっギブは…しない！」
マッシュくんとドットくんの取っ組み合いを見て少し引いているとランスくんに声をかけられる。
「行くぞ」
「うん」
『はーい』
そのままランスくんに連れられて街を歩く。
辺りには小さな子供や雑談している人がまばらにいてどこか楽しそうだった。
「新しい杖？」
「ああ、少し新しい杖を試したくてな。ちょうど神覚者候補の選抜試験が近いというウワサもある」
『神覚者候補、選抜試験…』
ランスくんの言った言葉を復唱してはその言葉がいかに重いものなのかを考える。神覚者候補選抜試験である程度の成績を納めないと神覚者になるための神覚者候補になれない。つまり本来ならばこの試験は僕も参加して当然の結果を出さないとならないのだがマッシュくんのことや神覚者を目指している人たちの目標が高すぎて僕が参加していいものかというのも悩ましくなってきた。参加する理由は両親に言われたからだなんて自分でも馬鹿馬鹿しく思えてくる。
「今年は無邪気な淵源の件もあって試験が前倒しになるらしい。が…俺らにとっては好都合。級硬貨の数からして俺たちは選抜試験を受けられるだろう。選抜試験に受かればあとは最終選考だけだ。魔法が使えないお前といえど俺は妹のために手を抜くつもりはない」
ランスくんの言葉が酷く僕に重くのしかかる。妹のためか。
＿あなたは神覚者になるために生まれてきた。素敵なことよ。あなたの存在意義は全て私たちを幸福にするためにある＿
『存在、意義…』
「A。何を止まってるんだ？」
『え、ああ！ちょっと考え事をしてただけ！ごめんごめん！』
ランスくんの言葉にいつの間にか足が止まっていたのか距離が空いていることに気づく。
笑顔を取り繕って駆け出そうとした瞬間誰かに腕を引かれているような気がした。それと同時にとある声が聞こえた。
「反抗しようだなんて、思わないよね？」
その言葉を聞き息を飲む。そのまま後ろを振り返るが誰もいない。あれはなんだったんだろうと思いながら脳裏に鮮明にその姿を映し出していた。それは幼い頃の僕に酷く似ていた。
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作者名：しろねこのみみ | 作成日時：2024年3月17日 12時
