人間洗浄機１１

日常392　確かにある希望 ページ47

理鶯は３号からの最後の手紙をそっと胸に寄せて木にもたれかかった。風が吹くたびに揺らぐ炎がその影を揺らす。

＿今にも泣きだしてしまいそうだ。

理鶯は夜空を見上げる。そこには無数の星がただ優しく理鶯を見下ろしていた。全てを包むような闇の中に、確かに理鶯はいた。炎と星空の明かりがただ眩しかった。

生きていた。
あの人が、生きていた。ただその情報だけで、理鶯の胸は満たされた。泣きそうなくらいに嬉しくて仕方が無かった。諦めかけた夜もあったが、今までの苦労の全ては今日の為であったと少しだけ報われた気分になった。

「今夜ほど、相応しい日はないだろう。」

理鶯はテントの奥にひっそりと置いてあったウィスキーを開けると、一杯だけグラスに次いで氷も入れることなく喉に流し込む。
久々のアルコールが喉を通り過ぎると、焼けるくらいに暑く感じた。しかし、それが丁度良く思えた。体温が上がり、同時に気合が入るようだった。

＿次のディビジョンバトルでは…

「ディビジョンバトルか…」

そこまで考えて、理鶯は少しおかしくなった。
少なくとも、左馬刻と銃兎に出会う前までの理鶯であれば、この瞬間も無駄には出来ないと何かに追われているように計画を立てだしていただろう。
居てもたってもいられなくなり、メロスのように駆け出したに違いない。

しかし、今の理鶯は少なくともMAD TRIGGER CREWの一員として、正面から中王区に挑もうと無意識に考えていたのだから、丸くなったものだ。

「やはり、仲間はいいな…。」

理鶯は無性に、左馬刻と銃兎に会いたくなった。
彼らのことだ、理鶯が呼び出せばこの時間だろうと飛んでくることだろう。理鶯はそれを知りつつ、呼び出しはしなかった。

「あとは、少女戦士との出会いに感謝を。」

理鶯が思い浮かべるのは、あの左馬刻が相手でも一歩も譲らない、芯のある少女。
乾Aを思い浮かべた。

理鶯にとっては、少女が五体満足で帰って来た、ただそれだけでも泣きそうなほど嬉しかったというのに…

「Thank you.」

理鶯はただ、そう呟いて瞳を閉じた。
きっと、今夜は素敵な夢が見られるだろうと信じて。




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お久しぶりです。ご心配をおかけしております。芋けんぴです。
久々の投稿、かなり緊張しています。
プライベートの方が落ち着いて来たので、ぼちぼち更新をしていこうかなと考えています。

よろしくお願いします。

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