日常390 闇を照らしてくれた人 ページ45
銃兎は本当に聞きたいことを聞き終えたのだろう。もうすっかり冷めきった珈琲を一気に飲み干すと、ソファーの背もたれに背中を預けた。
「さて、銃兎さんからの質問は終わったようですけど、他に何か聞きたい事ありますか?」
今回、巻き込んでしまった責任を感じている少女は、「何でもお答えします。」と困ったように笑って左馬刻と理鶯を見つめる。
「…俺様はいい。十分聞けたわ。あんがとな。」
左馬刻は不器用に少女を撫でると、煙草を吸いに行くらしい。
「ちょっと外で煙草吸ってくるわ。」と言葉を残して出て行った。すると、銃兎も「では、私も。」と、それに続くように席を立ち、左馬刻に着いて行った。
その場には必然的に少女と理鶯が残る。
「理鶯さん、降ろしてもらえませんか?」
少女は振り返って理鶯の顔を見た。
そう、忘れていたかもしれないが少女は現在、理鶯の膝の上に座っているのだ。
理鶯なら素直に放してくれると思っていたが、それは違ったらしい。
「…すまない。嫌だ。」
そう言うと、理鶯は少女に回った腕に少しだけ力を入れた。
いつも大人っぽい人が幼い行動をすると、無性に母性が出てくるのは何故だろうか。少女はギュンとする胸を押さえながら、理鶯にもたれかかった。
どうやら理鶯は不安になると人肌が恋しくなるようだ。
「あ、そう言えば理鶯さんにお手紙預かっていますよ。」
少女は思い出したように、鞄から便せんを一つ取り出した。
淡いピンクの花柄の便せんは可愛らしい。
少女は珊瑚から預かったその便せんを理鶯に差し出した。
「?これは。」
「お姉ちゃんから預かりました。理鶯さんに渡してほしいと。」
理鶯は少し不思議そうに便せんを見つめた。心当たりはないらしい。
「では、帰ってから読むことにしよう。」
「はい。お返事を書くなら預かりますからね。」
少女は手紙を渡せて満足したのか、脱力すると理鶯に体を預けた。抜け出すことを諦めたらしい。すると、理鶯もまた、少女を抱きしめる腕に力を込めた。
_本当によかった。
理鶯は中王区の狡猾さを知っていた。辛い戦場の中自らを照らしてくれた光を奪われたからだ。
だからこそ、今腕の中にある少女の温もりに救われた。中王区に逆らってもなお、帰ってきてくれた、帰ってこれた少女が理鶯にとってどれだけの希望になっただろうか。
理鶯は、少女の方に顔を埋めると
「A、感謝する。」
そう一言呟いた。
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時