日常374 可能性は ページ24
「Aさんのラップアビリティについて確かめたいことがあります。」
その言葉は少女と珊瑚にとって衝撃的だった。
何故なら…
「おかしいです。だって、…」
少女はちらりと珊瑚を見る。珊瑚は一つ頷いて話し出した。
「アタシのラップアビリティは【Change/チェンジ】。アンタも知ってる通りラップバトルの相手と自分の精神を入れ替えることができるわ。でも、それだけじゃないの。相手の体に入ることで、その潜在能力を知り、その体が持つラップアビリティを使うことが出来るものよ。」
そう。珊瑚のラップアビリティには1つの秘密があった。
『アンタのアビリティで、ここにいる全員潰してやる!!』
「あの時、アタシは本気でAのラップアビリティを使おうとしたわ。…でも、何も起こらなかった。それって、つまり…」
_Aにはラップアビリティが無いってことでしょう?
珊瑚はこの言葉を飲み込んだ。
ラップアビリティは誰にでも出るものではない。選ばれた者にのみ発現するものだ。しかし、それが少女に出なかったということは少女は選ばれなかったということになる。
そんな事実を、助けてもらった恩のある自分が証明して告げるのが嫌だった。
下を向いて手を握り締める珊瑚は少女よりも悔しそうだ。
そんな珊瑚の手に、2つの手が重なる。柔らかくもしっかりした少女の手。ごつごつして皮の分厚い龍琉の手。
「お姉ちゃん。私は大丈夫だよ。」
「マイクを使わなくてもAは十分に強い。そうなるように育てたからな。」
この親子の目はまっすぐだった。
「大丈夫ですよ。Aさん、珊瑚さん、龍琉さん。」
寂雷は安心してもらえるように、柔らかく話した。
「あの時、恐らくAさんのラップアビリティは発動したんです。しかし、<その時無傷だった>Aさんには影響が無かった。何故だか、わかりますか?」
「…私が無傷だと、変化が無いから?」
少女は顎に手を当てて考え込む。
「例えば、怪我をしていないのに絆創膏なんて貼らないでしょう?」
「そりゃ…貼りませんけど。」
「では、もう1つヒントを。Aさんのラップアビリティは私達には影響がありましたよ。」
「え…それって。」
寂雷のヒントにピンと来たのは珊瑚だった。
「恐らくですが、Aさんのラップアビリティは回復系だと予想しています。」
寂雷は柔らかく微笑んだ。
「誰よりも強く優しい、貴方にぴったりなアビリティです。」
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時