日常358 3の叫び ページ2
張りつめた空気が流れる。
誰も彼女たちの勝負に口を出せなかった。
ラップバトルに慣れてないだろう少女を心配するとともに、彼らはどこか安心していた。
いつもとは違う見た目で、華奢な女性の背中なのに、それが乾Aのものであると分かった瞬間に、その背中がとても頼もしいものに思えたのだ。
_あぁ、ようやく少女に会えた。
彼らは心底安堵した。
「先行は貴方がどうぞ。」
少女にそう言われると、3は表情を崩した。
「あんまり舐めないでくれる?」
少女が得意な肉弾戦で「体を返せ!」と言われたら、きっとすぐに返してしまう自信があったのに少女はそうしなかった。
_アタシの得意とするラップで勝負を挑まれた。
3はそのことが心底気に食わなかった。
「…アンタさ、アタシのラップアビリティを誤解していない?」
「何がです?」
3のラップアビリティは、【チェンジ】
しかし、それはただ精神を交換するものではない。
「アンタのアビリティで、ここにいる全員潰してやる!!」
不調和音なビートが流れる。
焦るような、急かすようなそんなビートが。
3が空気を吸う。
そして、明確な殺意が少女に向けられた。
「その目で見ないでアタシを 毎度毎夜くらう説教 本当怠いうざい無茶ぶり 人のパクリアタシは人外? NO心外!金輪際顔見せんなクソが
愛が何だ!全て幻想 何も知らない奴がIを語るな! 本当憂鬱 そのeye潰して復讐」
叫ぶようなラップは間違いなく3の本音だった。
この数日間、少女の体に入って3は初めて温かい愛を知ったのだ。知ったからこそ辛かった。
自分の人生とのギャップに打ちひしがれそうで堪らない。
八つ当たりだと分かっていても、少女が今回の被害者であることを理解していても、
_目の前でのほほんと愛されるアンタが憎い
嫉妬が3の心を支配した。
きっと、誰も立てていないだろう。
強い精神力と、優れた肉体を少女が持っていたことは身をもって知っている。
_きっとラップアビリティ―も凄い攻撃力なはず…
そう思って、3が顔を上げると_
「_は?」
自分の姿をした少女はケロリとしている。
「_え?」
そして、少女も困惑していた。
覚悟していたあの脳を揺さぶる痛みが来ない。
少女は間抜けな顔で首を傾げる。
_何故だ?
いくら理由を考えても分からなかった。
「よくわかんないけど、次は私のターンです。」
少女がそう言ってマイクを構えると、今度は軽快なビートが流れた。
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時