日常357 その勝負ちょっと待った ページ1
「ちょっと待ったぁぁぁぁ!」
マイクを再起動し、再度ラップバトルを開始しようとした男達を止めたのは、叫び慣れていない可愛らしい声だった。
突然の声に驚き、その場にいた全員がその声の主に注目する。
「え…いや、誰だ?」
しかし、一郎はポロリと本音を零した。
忘れてはいけない、今の少女は3の身体に入っているのだ。
一部の人を除き、そこに立つ華奢な女性である3が乾Aだとは気づけなかった。
「!A!どうやってここにこれたんだ!?」
「盗聴用のイヤホンを東方天さんの部屋からくすねて、この現場の音声を聞きつけて来たんです。」
いち早く状況を理解したトムが慌てて少女に駆け寄る。そして、少女の無事をその目に焼き付けると、トムはその場に座り込んだ。
「…すまなかった。」
「謝る必要はありません。想定内です。」
少女は罪悪感に蝕まれているトムの肩に優しく手を添えると、そのまま自分の姿をしている3に向かって真っすぐ歩み寄った。
その様子を見た人たちは瞬時に理解した。
あの華奢な女性の体の中にこそ、少女の魂があるのだと。
「貴方の名前を教えて。」
「…残念だけど、愛されているアンタと違ってアタシに名前なんて無いわ。」
「…そう、ですか。」
少女は一定の距離を取って止まった。
そして、ポケットからあるモノを取り出す。
「おい!何でアイツがあんなもん持ってやがる!」
「そんなん俺が知るか!」
それを見て動揺した声を上げる左馬刻と銃兎。
「じゃあ、3と呼ばせてもらいます。」
「お好きにどーぞ。」
「3。私とはこれで決着を付けましょう。」
少女は手に持った「マイク」を握り締める。
「へぇ。アンタ、ラップ初心者だって聞いてたけど…」
少女の体に入っている3がニヒルに嗤う。
「アタシ相手に勝てるの?」
「貴方の土俵で戦います。」
_ブゥン
_ブゥン
2つのマイクの起動音が響いた。
「アタシが勝ったらこの体、貰うわよ。」
そう言った3の後ろに、【ボッカ・デラ・ベリタ】所謂、真実の口が現れて大きく口を開く。その口がスピーカーになっているようだ。
マイクは【拡声器】に姿を変えた。
「自分の身体は自分で取り戻します。」
少女の後ろには、【ツギハギのクマさん人形】と乱数のスピーカーによく似たハート型のスピーカーが漂う。
マイクはピンクのマイクで、コードがうようよと漂っている。
「先行は貴方がどうぞ。」
少女はそう言うと、ニッコリ笑って見せた。
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いもけんぴ(プロフ) - あきえさん» あきえ様、コメントありがとうございます。とても嬉しいです!!左馬刻様ですね!お任せくださいませ!私も、実は左馬刻様が最推しです… (2022年7月10日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
あきえ(プロフ) - 初め芋けんぴ様の作品大好きで読ませて頂いています!あまり無理しない範囲で更新お待ちしています!(出来たら、出来たらで良いので!左馬刻様の登場!!よろしくお願いします!!) (2022年7月9日 21時) (レス) @page50 id: 7956ee69df (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - 蒼井とーるさん» 蒼井とーるさん、お久しぶりです!コメントありがとうございます。お褒めの言葉も嬉しい限りです!私も、蒼井さんの反応集好きで、読ませていただいてますよ! ポッセのお茶会、良いですよね〜。絶対平和です。 (2022年7月9日 0時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
蒼井とーる(プロフ) - 今回も最高でした…!ポッセのお茶会に混ざりたい今日この頃です。 (2022年7月8日 10時) (レス) @page49 id: 90146b8ac1 (このIDを非表示/違反報告)
いもけんぴ(プロフ) - なのはさん» なのは様、コメントありがとうございます。お返事が遅くなり申し訳ありません。パスワード設定の作品の公開はもう少しお待ちいただけますと幸いです。更新も、私生活が忙しくままならない事を申し訳なく思っております。 (2022年6月25日 10時) (レス) id: e6e71631e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2021年6月19日 23時