人間洗浄機９

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「これで満足っすか？」

一郎がそう言った瞬間、
＿＿ゴンっ
と音が響く。

音のした方を見ると、パスタが乱暴に置かれていた。
そして、パスタを持ってきた主は…

「ウチの大事なバイト生達に何か文句でもございますでしょうか？」

「え、いや…」
「あのぉ…別に俺らは…」

能面を被ったように恐ろしい安西だ。
安西はチャラ男客を見てニッコリ笑う。ニッコリ。

「一応ですね、お客さんがお店を選ぶ権利があるように、店側もお客さんを選ぶ権利…あると思うんですよ。」

笑顔で言うから逆に恐ろしい。
チャラ男客も反論が喉に突っかかって出ない。
それほどの威圧感が今の安西にはあった。

「ウチの大事なバイト生のみならず、本日来てくださった大切な他のお客様のご迷惑になるようならば、容赦なく追い返しますので…そのつもりで。」

「「「う…うっす。」」」

安西はそれだけ言うと、満足げに腰に手を当てる。

＿＿パチ…パチパチ
＿＿＿パチパチパチパチ！

すると、拍手の音が響く。
他のお客様が拍手を送ってくれたのだ。

その後は、チャラ男客のマナーも良くなり、少女はあろうことか仲良くなっていた。
それを見て、安西も一郎も
＿彼女らしい。
と複雑そうに見ていた。

そして、忙しさのピークも終わり…

「「お疲れさまでしたー。」」

「はーい。ありがとね。」
「A先輩、山田さん、お疲れ様です！」

「カナミン、安西さんお疲れ様〜またね！」

少女と一郎の本日の仕事が終了した。
２人は、今日は賄は大丈夫だと足早に帰宅したので、ナポリには安西と竜ケ崎だけが残る。


「安西さん。」
「カナミン。」

竜ケ崎と安西は互いに顔を見合わせる。
そして…

「見た！？」「見ました！！」

＿キャー！！

と２人で騒ぎ出した。
まぁ、あれだ。一郎がかましたキスのふりだ。

下世話な話し好きのこの２人。
興奮しないはずが無かった。

「一郎君、やるね〜。おじさん、キュンキュンしちゃった。」
「いや、本当それですよね！少女マンガじゃー！」

安西も竜ケ崎も、飛び跳ねて喜ぶ。
少女の恋愛事情は今まで無かったので、特に嬉しいのだ。

「僕、今日ばかりはあのチャラ男客に感謝したもん〜。ちょっとパスタ大盛にしちゃった！」

「やっぱりそうでしたか！」

「まぁ、ムカついたのも事実だけどね〜。でもやっぱドラマにはああ言う奴が必要っしょ！」

「ふー！流石安西さん！」


この２人、その後１時間ほど、一郎×少女の恋愛妄想を語り明かしたそうな。

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