人間洗浄機９

日常307　捨て身の一撃 ページ1

「いいえ。違いますよーん！」

そう言って立ち上がる乱数。
明らかに嘘をついている彼を、皆が見る。

「僕、もう帰るね！ほら、Aも帰ろ〜。」

乱数はそのまま少女と繋いでいる手を引いて歩き出そうとするが

「ちょ、乱数。どうしたの？」

少女は、立ち上がろうとはしない。
これを見て黒也は今しかないと、

「アンタたち！ライブやってくれないか？」

と声を上げた。
これが最後のチャンスだと言わんばかりに、縋り付くように声を上げる黒也。
…顔は怖いけど。

「え？ヤダヤダ！」

乱数はすぐに断りの言葉を吐く。
そのわけは、

「こんな不気味なとこじゃ出来ないよ！」

と、言うわけである。
明るくポップなFring PosseとMAHOUJINは確かに合ってない。

「満員にしてくれたら、入場料代全部お宅らにあげるよ。ただし、経費はそっち持ちだがね。」

しかし、黒也もここで引き下がるわけにはいかない。

「お、総取りかよ！」

「帝統！変な事考えないの！」

金銭面に大きく反応した帝統。

「でも、面白そうじゃないですか？」

「も〜幻太郎まで。」

ウキウキした表情で乱数を見上げる幻太郎。
２人に押されて乱数はたじろぐ。

「乱数、私も協力するから。」

「ぐっ…Aまで。」

少女に言われて乱数はため息を吐く。

「あのFring Posseが出てくれたら皆来てくれると思ったんですがね。」

黒也はニヤリと笑う。

「頼まれてんぞ〜。乱数、どうする？」

「乱数の男としての度量が試されていますねぇ。」

帝統と幻太郎もニヤニヤして乱数を見た。
乱数はムスッとする。

「別に…どう思われたって。」

「い〜じゃねぇか！俺たちもう怖がらせたりしないからさ！一発かましてやろうぜ！」

「それとも、怖がっていることを認めると？」

承諾する気満々の２人。
後はリーダーの乱数だけだ。

「別に怖がってなんか…。」

あともう一押し。
帝統と幻太郎と黒也の、期待の籠った視線が少女の背中に降り注がれる。

＿っく。これは…プライドを捨てろ、私。娑婆洲さんの為だ。
少女がキュっと繋いだ手に力を籠めると、乱数と目が合う。

「…私、乱数のかっこいい所見たいなぁ、なんて。あはは。」

＿恥ずか死ぬわ。
ここで少女の捨て身の一言。
さて、乱数は…？

「…はぁ。そうだね。おねーさん達を喜ばせる方がずっと良いもんね。」

乱数は少女を見て微笑む。

「わかった！やるよ！」

ついに承諾した。

「でも、やるなら絶対ソールドアウトにして見せるからね！」

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