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【騰 2】2 ページ34

騰はとりあえず座っててと言うと台所へ向かい
程なくして暖かい湯気の立つココアをAの所へ持ってきた

Aは受け取ったココアを一口飲むと、甘いココアが冷えた身体を芯から温めてくれる気がして、ホゥっと息を吐いた


「いきなり部屋に連れ込まれて、不信感しかないと思うが…部屋のドアの鍵は空いてるし、私はこれ以上近づかないから…安心してくれ」
「いえ…ご親切に、ココアまで…それで、何かご存知なんですよね?」


騰はどこか話しずらそうにした後に
ようやく口を開いた


「…君の恋人、他に良い人が居るようだ…」


その言葉に頭が真っ白になり
Aはさっき耐えた涙がポロリと頬を伝うのを感じた
一つ溢れれば次から次へと流れ出す涙を止める術は無く
ただ静かに泣き続けた


「嫌われたとか、飽きた以前に…もう他に…良い人がいるなんて…」
「…もっと早く伝えるべきだったな……。見ていられなかったんだ…」


騰はそう言うと、テーブル越しに優しくAの手を握ってやり、泣き止むまでそうしていた


少しずつ落ち着きを取り戻したAは、見苦しいところをと詫び、その日は帰宅することにした


「…また、彼の所へ行ってみるつもりか?」
「たとえ浮気されてても、私達の間にちゃんとした話し合いがなされてないので…それまでは…」
「…そうか、もし…辛ければ、また話は聞けるぞ。まぁ、こんなおじさんで良ければな」


そう言う騰に、Aは目を丸くして、すぐに笑顔を見せてふふっと笑った


「素敵なココア友達ができたみたい」
「そうだ、うちのココアは輸入物だから、他なんかより格別だ」


二人は笑い合うと、Aは玄関を出て、ドアが閉まり切るまで騰に手を振ってみせた


Aが帰って暫くすると、隣の…Aの彼の部屋から男女の笑い声が聞こえてきた

その後すぐに、情事の声が漏れてきて
騰は僅かな怒りが込み上げてきた

礼儀正しく、たかが隣人というだけの騰に、顔を合わせるたびにこんにちは、こんばんはと笑顔で声をかけてきたA、たまたま見かけた時はアパートに住む老人のゴミ出しを手伝ったりしていた
あの男にはもったいないほど、心の綺麗な子だと思ったのだ…
なのに、あの男は…


腹が立って、壁をドンと蹴りつければ
一瞬シーンとしてすぐに、やっかみかよ!という言葉と小馬鹿にしたような笑い声が聞こえた

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RUI(プロフ) - 凌さん» なかなか更新できず申し訳ありません!順次制作しようと思いますので、よろしくお願いします。( *´艸`) (2020年9月6日 11時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
- 李牧落ちありがとうございます。現代編も読んでみたいです。紫伯もお願いします。 (2020年9月6日 11時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 凌さん» コメント、リクエストありがとうございます!李牧さんも素敵ですよね!現代と過去どちらがお好きですか? (2020年8月13日 23時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
- 李牧落ちでリクエストしたいです。 (2020年8月13日 16時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - もちろんです!また、お邪魔させてもらいます!リアルに夢主ちゃんと同じ位身長があり、職業はお医者さんではないですけど笑。自分と重ねて読まさせてもらいました。疲れていても家で王騎将軍が待っていてくれたらいいのにと本気で思ってしまいました笑。応援してます! (2019年9月17日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RUI | 作成日時:2019年9月15日 23時

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