【騰】9 ページ27
縁談当日
Aはいつも通りに着替えを手伝いながら、うまくいくと良いですねと、心にもない事を言って
自分の気持ちを押し殺していた
「…伴侶は別にまだいらないのだがな…」
騰はそう言ってため息を吐きながら馬に乗り、約束の場所へと出発して行った
「騰様…私…」
その先の言葉は、自分なんかが口にして良いような事ではない
そう思いAは言葉に出す事をやめた
「それで、つい先日筝を習い始めましたの…」
つまらない
その一言だった
目の前に座る女人は確かに器量は良い
だがそれだけだった
話といえば自分の最近の出来や周りの噂話
私の事を褒めちぎっては自分の話に戻しての繰り返し
中身のない会話がこれほどに苦痛だとは思わなかった
私が今思うのは、Aの作った飯を食べながら
Aと自分の夢見る太平の世を語るあの時間が恋しいという事
私は失礼を承知で席を立った
「と、騰さま?」
女人はまさか話の途中に立ち上がり、ましてや去ろうとするなんてと困惑している
「失礼、やはり私はまだ身を固めるべき時期じゃないようです。貴女のように美しい方は私には勿体ない。では」
私がそう言って本当に立ち去ると、背後から感情的にに叫ぶ声が聞こえてきた
その声を聞き、一つため息を吐いた
屋敷に戻るとAが庭先を掃除しているところだった
その情景を見て心の底から落ち着いた気持ちになった
Aはまだ帰ってくる時間でもないのに私が立っているのを見つけて驚いた顔をしていた
「騰様っ…おかえりなさいませ。いかがでしたか?」
「…私には過ぎた方のようだったから、お断りした」
「えっ!?」
「腹が減ったな、何かないか?」
私はそう言うと、Aが何か言う前に屋敷の中へ入っていく
すると、後ろから
ただいま!と元気な声が聞こえてきた
きっと振り返ればいつもの愛らしい笑顔が咲き誇ってるに違いない
私はまだ、Aと過ごすこの何気ない日々を手放すのが惜しいのだろう
私は自分でも知らぬうちに、ふっと笑っていた
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RUI(プロフ) - 凌さん» なかなか更新できず申し訳ありません!順次制作しようと思いますので、よろしくお願いします。( *´艸`) (2020年9月6日 11時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - 李牧落ちありがとうございます。現代編も読んでみたいです。紫伯もお願いします。 (2020年9月6日 11時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 凌さん» コメント、リクエストありがとうございます!李牧さんも素敵ですよね!現代と過去どちらがお好きですか? (2020年8月13日 23時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - 李牧落ちでリクエストしたいです。 (2020年8月13日 16時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - もちろんです!また、お邪魔させてもらいます!リアルに夢主ちゃんと同じ位身長があり、職業はお医者さんではないですけど笑。自分と重ねて読まさせてもらいました。疲れていても家で王騎将軍が待っていてくれたらいいのにと本気で思ってしまいました笑。応援してます! (2019年9月17日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RUI | 作成日時:2019年9月15日 23時