【騰】1 ページ19
この世は地獄だ…
誰も戦争孤児の下僕なんて気にかけてはくれない…
薄汚くて、ガリガリで、死にそうな下僕なんて
一人消えたって変わらない
目の前が霞んでくる…
「おい…」
耳が詰まったみたいに聞こえない…
けど、誰かに声をかけられているみたい…
酷く冷えた両肩に、暖かい大きな手が置かれるのがわかる
あぁ、こんな私に話しかけ、触れてくれる人もいるんだ…
なんて思いながら、私は最後の力が流れ落ちるように涙し、意識をなくしてしまった…
全く、こんな底冷えするような日に限って余計な失敗を回してくるとは…
お陰でこんな時間になってしまった…
上質な衣服を着た長身の男は、通い慣れた道を馬に乗って進んでいる
彼の名は騰、ここ咸陽に近い都の内史として勤めている文官だ
今日は部下の失敗の尻拭いをしていてかなり遅い時間になってしまったのだ
騰が人気のほぼ無いに等しい暗い道を進んでいれば
一軒の家の前でそこの主人らしい男がガリガリに痩せこけた子供を殴りつけ、蹴り飛ばし、雪の積もる外に放り投げる所を目撃してしまった
子供はおそらく下僕だろう
村の長の家にはよく戦争で親を亡くした孤児が下僕として住まわせてもらっているし、こういう事も珍しくは無い
騰も今までにそういうのは幾度と目撃してきた
しかし、何故かこの日ばかりは黙って見ていられなかった
別に子供が可哀想だとかそう言うのがあるわけでは無いが、とにかく、騰は見て見ぬ振りが出来なかった
子供は痛む身体をブルブルと震えさせ、必死に抱き込み少しでも暖を取ろうと縮こまっている
かなり酷い折檻を受けたのか、意識は朦朧としているようで、このまま放っておけばこの子供は確実に死んでしまうに違いなかった
騰はそんな子供に声をかけるが、反応が悪く、両肩に手をやれば酷く冷たかった
こんな寒い日にこれほどの薄着で外へ放り出されれば、経った数分だって凍えてしまうのは当たり前だった
騰はまず自分の羽織を子供に与え、抱え込み、これ以上冷えてしまわないようにした上で
この子供の主人を訪ねた
54人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
RUI(プロフ) - 凌さん» なかなか更新できず申し訳ありません!順次制作しようと思いますので、よろしくお願いします。( *´艸`) (2020年9月6日 11時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - 李牧落ちありがとうございます。現代編も読んでみたいです。紫伯もお願いします。 (2020年9月6日 11時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
RUI(プロフ) - 凌さん» コメント、リクエストありがとうございます!李牧さんも素敵ですよね!現代と過去どちらがお好きですか? (2020年8月13日 23時) (レス) id: f01634fd46 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - 李牧落ちでリクエストしたいです。 (2020年8月13日 16時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - もちろんです!また、お邪魔させてもらいます!リアルに夢主ちゃんと同じ位身長があり、職業はお医者さんではないですけど笑。自分と重ねて読まさせてもらいました。疲れていても家で王騎将軍が待っていてくれたらいいのにと本気で思ってしまいました笑。応援してます! (2019年9月17日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:RUI | 作成日時:2019年9月15日 23時