【キングダム】短編小説集

【王騎】16 ページ16

金曜日

親睦会という名の、ただの飲み会があった
まぁ、全医師、全看護師が参加できるわけではな為
人数がそんなに多いわけではないが…
外科内の半分は来ている
そして何故か半分のうち、同席になる確率は下がっている筈なのに…
目の前にこの男が座っているのだろうか…


「瀬戸をツマミに酒…不味い」
「おい！なんだよ！俺まだ絡んでないのに！」
「瀬戸センセーの日頃の行いってやつですよー！」
「そーですよー！」


Aの両サイドに座る看護師達の援護射撃を受け、瀬戸は胸にグサグサと打ち込まれ胸を押さえたくなった


「…し、知るかよ！だいたいなー俺の方が年上で！」
「年上とか、年下とか…関係あるの？」
「えっ…」


いつもと雰囲気の違うAに驚く瀬戸
看護師達もその凄みのある声色にドキッとしていた


「私は…歳で見下されたり、見下したりって好きじゃない…私の腕がまだまだだと言うなら聞き入れる。けど、歳がっていう理由でマウント取って来たりするの…どうかと思うけど…人に横槍入れて来る前に、やる事いっぱいある筈だけど？」

「A先生…？あの…」
「ごめんね、イライラぶつけちゃったみたい。ちょっと外に出てくる」
「…A先生……」


Aはそういうとすぐに席を立ち
店から出て行ってしまう
その後ろ姿を見送った後、看護師達はジトっとした視線で瀬戸をみやった


「…完全に嫌われてますね」
「好きな子ほど虐めたいって、小学生のやる事ですよ」
「わーってるよ！！！」


瀬戸はそう言ってAの後を追うように外へと飛び出して行った


「…何」
「…いや…今までの事、謝ろうと思って…」
「わかってないのに謝られても」
「わっ、わかってるよ…余計な事言ってる自覚あったし…だから、その…ごめん。お前の医者としての腕は確実に俺なんかとは比べもんにならないよ…尊敬だって、実は…してる…」
「…気持ち悪い…」
「お前なぁ！」


はぁ、と盛大にため息を吐いて
瀬戸はその場にしゃがみ込んだ


「俺、お前の事好きなんだよ」
「へー…。は？」


Aは自分の耳を疑った
瀬戸が、誰を？？私を？？好き？


「な、何嘘言ってるの？酔ってるの？いつもの悪い冗談でしょ？」

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