【キングダム】これ、落としてましたよ

花屋のファントム ページ4

Aのバイト先であるここ、山界フラワーは
ここらで1番大きな花屋だ
店長である楊端和が一代でここまで大きな花屋に育て上げたのだ
そんな山界フラワーの従業員達は個性の強い、しかも男が多かった

副店長のバジオウを始め、なぜか皆んな不思議な面をつけている

制服か？と思えば楊端和はつけたりつけなかったりだし、Aは仮面すら強要されたことはない
ただの趣味と思うようにしている


「ふぅ、水やりはこんなとこかな。あ、タジフさん！」


Aが外に出してある鉢植えに水やりを終えたところで、社員のタジフがさっき届いた仕入れの花の入った段ボールをまとめて担いでくれていた


「………」
「えっと…」
「仕入れの花はここにあるだけか？と聞いている」
「あ！バジオウさん！そう仰ってるんですね！はい、それで全てです！」


Aはどこの国かわからない言葉を話されいつも戸惑うが、だいたいこうしてバジオウが何処からともなくやってきて通訳してくれるので助かっている

なんでも、ここで働く人は殆どが海外から移住して来たらしく、まともに話せるのは楊端和とバジオウくらいで
最初は本当にすぐ辞めようと思ったくらいだった
何を言われているのか、何をどう伝えたら良いのかわからなかったから
それでもここまで長く勤められているのは、楊端和とバジオウ、見た目は厳ついが心優しいタジフ、つっけんどんな事を言ってくるが実は面倒見の良いシュンメンなど、優しい従業員達のおかげだ

Aはホースを巻いて店に戻そうとした時
いつものことながらに、外に出て来たバジオウを見るや、街のおばちゃん方がバジオウに群がって取り囲んでいた

なんでも、客達の間ではバジオウの事を山界フラワー…花屋のファントムと呼んでいるらしい


「まぁ、すごく良い筋肉してて、声も良くて、前にチラッとみたけど、なかなかの美形だもんね…ファントムとはまた、うん。的を得てる」


中に戻ろうと再度ホースを持ち直し、踵を返そうとすると、今度は群がったおばちゃん達の奥に
つい先ほど会った騰が歩いているのを見つけた
近くにはもう1人一緒に歩いているところを見ると、同じ会社の人なのか、その人も背が高くて…


「唇オバケ…」


向こうもAに気付いたのか
少し目が見開かれたが、すぐに無表情になった

Aは通り過ぎるだろと思ったが、騰はAの目の前まで来て立ち止まった

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