【キングダム】これ、落としてましたよ

君の悩みの種は… ページ21

学祭で見たAは、バイト中に見るAと少し違っていて、新鮮だった
この間泣いていたのはきっとあの男のせいだろう
だが、どんな内容で泣いていたのかまでは聞けなかった
ただ、分かっていることは、Aの悩みのタネがあの男であるという事
それはつまり、Aの気持ちはあの男に傾いているという事

認めたくはないが、今の俺には分が悪いだろう
それでも、Aに伝えなければチャンスすら来ないと思い
時間を作ってもらったのだ
少しでも入る余地がある今、それを見逃すことなど出来ないし、もう時が来るのを待っていては遅いから…


バジオウはサッパリとして甘さも控え目なパウンドケーキを食べ終えると、ハーブティを飲み干して
仕事で忙しいAに目配せだけしてその場を去った





広い敷地内、あたりをキョロキョロする不審者…もとい騰
早く仕事を終わらせて学祭に来たは良いが、各ブースに入ってAが居ないか探していた為、スーツ姿の長髪髭面男が両手に色々な食べ物を抱えて歩き回る様はなんとも珍妙だ

大学内のあらゆる所で色々な出店、発表がなされているため、Aがどの学部、どの研究室、どのサークルなのかも知らないし、どこで出店しているかすら聞いていない騰は早速迷子というやつだった

さらにキョロキョロする中、変な格好をした少年とも少女とも言える小柄な生徒を見つけ
その顔に覚えがあった為騰はその生徒に話しかけた


「君、Aさんと前に会社まで来た子だろ？」
「えぇ？って！うぇえええ！？内史さん！？」
「あぁん？貂知り合いか？」
「信、この人は春秋カンパニーの人だよ！」
「はぁ？どう見ても不審し…いや。なんでもないっす」


皆まで言う前に、信は騰の目力に気圧されて口を噤んだ


「Aさんは一体どこで出店しているか分からないんだ、すまないが案内頼めるか？」
「え？いやぁ。オレは今無理だし…そうだ。信行けよ」
「あぁ？なんで俺がAんとこに連れて行かなきゃ」
「ただとは言わん。これをやろう」


騰は持っていた食べ物達を信に手渡して行く


「おー。こっちこっち」
「切り替えの早さっ！」


信は既にもらった食べ物を頬張りながら騰を案内し始める


「にしてもよー、アイツに何の用なん…っすか？」
「誤解を解く為だ」
「誤解ー？まさか！痴漢にでも間違われたのかよ！？あ…間違えられたんすか！？…ってー…んな訳ないっすよねー」


騰は無言の圧力か何かで、信を黙らせた

誤解→←揺れる

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