過去 ─前編─ ページ48
―――眩しい、日々だった。
そう言いたいが、言えない。
どちらかというと、夢を持つべき子供だった
筈なのに、それが許されなかった。
今から語るのは、そんな僕の過去だ。
ある時、ある場所で、とある小さな人間が
産声を上げた。
その赤子の名は"吹雪"。
極普通の家庭に生まれた、小さなか弱い命だ。
―――それから3年後。
あの赤子は3歳になり、
幼稚園へ通うようになった頃だ。
吹雪は母に訊いた。
「ねえ、なんで父さんと母さんは喧嘩するの？」
母は困った。
まさか吹雪が寝ている間の言い争いを
聴かれていたとは思わなかったのだ。
そして母は仕方ないと思い、
本当のことを話した。
「……それはね、吹雪、
あなたを産んでしまったからよ」
「……えっ？」
吹雪はキョトンとして、
まだ小さな頭を回転させた。
しかし、吹雪にはよくわからなかった。
今まで、ずっと父も母も笑顔で優しかったのに、
目の前にいる母はとても困ったような、
何だか少し怖いような笑顔を作っていた。
それでも吹雪は何とか笑顔になってもらおうと
話題を変えようとした。
「母さん、そういえばね、今日は幼稚園で
"家族"の絵を描いたんだよ！
それでね、それでねっ？
これがね、僕が描いた絵なの…！」
吹雪はそう言って小さな両手で大きな紙を持ち、
自分の上で大袈裟に広げて見せた。
すると、それを見た母は一瞬だけ表情を曇らせ、
また笑顔を作って「上手ね」と心無い言葉を
かけた。
「………」
吹雪は恐怖を覚えた。
吹雪自身にもその理由は分からないが、
何だか、ただただその笑顔が怖かった。
それからずっと、吹雪はいつもなら
母と遊んでいた筈なのに、
1人で外で遊ぶようになった。
近所に友達はおらず、たった1人で。
そしてある時言ったのだ。
「ただいま！
―――ねえねえ、母さん、今日ね。
たっくさんお友達が出来たの！」
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雨音時雨(プロフ) - むつき。さん» 毎週読んで下さり、ありがとうございます！「意味が分かると怖がる話３」でもよろしくお願いします！m(_ _)m (2021年11月7日 16時) (
レス) id: 8ae1462a28 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - すごく意味が深くて素敵でした… (2021年11月7日 15時) (レス) @page50 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
雨音時雨(プロフ) - 皆様のお陰で100話到達となりました！ありがとうございます！また来週から「意味が分かると怖がる話３」としてスタートするので、よろしくおねがい致します…！ (2021年11月7日 3時) (レス) id: 3ecc3e8689 (このIDを非表示/違反報告)
雨音時雨(プロフ) - むつき。さん» ありがとうございます！確かに少し書き方は変えてます。来週の後編と解説の更新も楽しんで頂けるように頑張ります！ (2021年10月30日 21時) (レス) id: 8ae1462a28 (このIDを非表示/違反報告)
むつき。(プロフ) - 雨音時雨さん» 前編の書き方、勘違いかもしれませんが、少し違う気がして、いつも以上に楽しめました！後編と解説の投稿も楽しみにしています！ (2021年10月30日 20時) (レス) @page48 id: da60582d52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イミコワ部 | 作成日時：2021年5月15日 3時
