あの子は、 ページ36
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kuina side
「っ!あ、おった!!」
階段の踊り場、もうかれこれ2時間は探している目的の人物を見つけ腰に手を当てて深呼吸をする。
「何?どうしたの、そんなに急いで」
ポケットに手を入れたチシヤが振り返って聞く。
肩で息を切らす自分と比べ、余裕そうな彼が今だけは憎らしい。
「なぁ、Aに計画のこと話してないん?」
「まさか。」
「ウチ危うく口が滑りそうになったわ」
「それは頂けないねぇ。この計画がバレるのは。」
「よォ言うわ、アリスには言ったくせにあの子には言わんの、なんでなん?」
幹部候補にも反対したらしいし。
その一言は飲み込んだ。今言うべきでは無いことをわかっているから。
「…なんで俺が彼女を計画に入れると思ったの?」
「そりゃああんだけあんたが話しかけとったら、入れるんかなって思うやろ。何?巻き込みたくないん?」
形のいい眉毛が吊り上がる。
彼の喜怒哀楽は「バカにする嘲笑」に全フリしていて分かりにくいけれど、時々僅かな動揺がこうして現れる。
特に、Aという人物がチシヤの計画に入り込んでから。
逆に、計画に必要ないならなんであんなに必要以上に接触するん。
いつも打算で行動してきたチシヤにとってそれがイレギュラーなの、気づいてる?
様々なことを問いかけたくなったが一旦落ち着かせる。
「なぁ、今日クラブの8のゲームやったんよ」
「へぇ。よく生きて帰ってこれたね」
「ほんまにな。誰のおかげやと思う?」
さぁ。とチシヤはしらばっくれた。
「今日のは、あの子がおらんかったらみんな死んでた。しかも、土壇場なのに小学生の女の子と初心者の男を助けて。」
初心者の男、というワードに少しだけ反応する。
「随分情に厚いねぇ。でもそんなの、ここでは直ぐに死ぬ。」
「分かってる。やけどこうやってあの子は生きとる。アリスと少しだけ似とるやん」
「だから、何?そろそろ会議室に行きたいんだけど。俺、呼ばれてるんだよね」
きっとウチが何を言うのか察して、言わせないようにしている。
「…あの子も、利用したらええやん。アリスみたいに」
思ってない事を言う。ごめんな、A。
けど困るんよ。
パートナーの感情がなんにも読めへんかったら。
何を思って、Aに過干渉するくせにこうやって変なところは遠ざけようとするのか。
人を常に見下しているようなチシヤの本心を知りたくて、ひとつも動作を逃さないようにじっと焼きつける。
ゆっくりと体をこっちに向けたチシヤは、蠱惑的にゆっくりと薄笑い、囁くような声で言った。
「あの子は、ダメだよ」
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みりん(プロフ) - はーとさん» わぁ嬉しいです( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )! 褒め方が上手すぎて更新意欲が止まりません!笑 今後ともよろしくお願いします! (2023年1月26日 2時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - みりんさん» 本家のストーリーもありつつチシヤとのシーンがオリジナルで加えられていて最高です✨️✨無理はせずにこれからも更新お願いします🙇♂️これからも読ませていただきます^^ (2023年1月25日 17時) (レス) id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - そらのさん» 嬉しいです…!止まらなくて、気づいたらもう移行なのですが最後まで付き合ってくださるとありがたいです՞・֊・՞! 更新が捗ります🫶🏻 (2023年1月25日 4時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
そらの(プロフ) - 主様の小説本当好きです!チシヤの小説少ないのでこの作品が楽しみで仕方ないです!更新楽しみにしております! (2023年1月25日 4時) (レス) @page47 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はーとさん» 嬉しいコメントありがとうございますꈍ .̮ ꈍ こういうコメントのおかげで更新する気力が湧いてきます!今日も頑張りますね💪🏻( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ ) (2023年1月25日 3時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年1月18日 5時