第二関門 ページ32
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「…第一関門は突破。おめでとう、A」
アンが腕を組みながら、「…第二関門は早いみたいね」と眉を顰めた。
「A、大丈夫や。落ち着いていき!」
相変わらず棘のポールが行く手を阻む。
ふと前を見ると、教習所に似つかわしくないひらがなで「ごーる」と白線で描かれていた。
あと少し。アクセルに力を込めると、「いや!」とユイちゃんの声がした。
青ざめるユイちゃんにクイナが心配そうに「どうした?」と問いかける。人の死を見てしまったのか、と思っていたら、震える手で何やら後ろを指さした。
タクヤさんは震えていてまるで使い物にならない。
ユイちゃんの指が指す方向を確認したクイナは、神妙な面持ちでミラーを見た後にこう言った。
「A、トラが追ってきてる」
日常生活で耳にしないそのフレーズに思わず耳を疑いたくなるが、ユイちゃんの座高が低いおかげで徐々に見えてくる。
車なんかよりもよっぽど早いトラが、私たちの車目掛けて走ってきているのを。
嘘でしょ、と絶望的な気持ちになっていると、ポールがミラーを掠って飛んで行った。
しくった。これで後方確認がおじゃんだ。
「…っ、クイナ!ごめん、私はポールに集中したいから、どうすればいいか教えて欲しい」
「…分かった。アン側に寄ってきてる!」
右にハンドルを切る。
大きく車体が揺れて、横転しそうになるのを何とか回避した。
一息ついたと思ったらグオォォ、と唸り声を上げて車の上に乗った巨体。
フロントガラスに身を乗り出し、鋭利な爪で叩きわろうとするその姿にとうとうタクヤくんが叫び声を上げた。
「っ、前が見えない…」
「A、振り落とすのよ」
アンがワイパーを出してトラの動きを妨害する。
ポールが一瞬脳裏によぎって、直ぐに飛散した。
どうせここで死ぬなら。
次の瞬間、大きくハンドルを左右に動かし、屋根にいる巨体を振り落とす。
ガリ!ガリ!とトゲが車体を抉る音がして、クイナが「A!あと少しでゴールや!」と声を上げた。
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みりん(プロフ) - はーとさん» わぁ嬉しいです( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )! 褒め方が上手すぎて更新意欲が止まりません!笑 今後ともよろしくお願いします! (2023年1月26日 2時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - みりんさん» 本家のストーリーもありつつチシヤとのシーンがオリジナルで加えられていて最高です✨️✨無理はせずにこれからも更新お願いします🙇♂️これからも読ませていただきます^^ (2023年1月25日 17時) (レス) id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - そらのさん» 嬉しいです…!止まらなくて、気づいたらもう移行なのですが最後まで付き合ってくださるとありがたいです՞・֊・՞! 更新が捗ります🫶🏻 (2023年1月25日 4時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
そらの(プロフ) - 主様の小説本当好きです!チシヤの小説少ないのでこの作品が楽しみで仕方ないです!更新楽しみにしております! (2023年1月25日 4時) (レス) @page47 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はーとさん» 嬉しいコメントありがとうございますꈍ .̮ ꈍ こういうコメントのおかげで更新する気力が湧いてきます!今日も頑張りますね💪🏻( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ ) (2023年1月25日 3時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年1月18日 5時