幸せ ページ17
・
「…出ていってよ」
「…ごめんなさい、」
「ごめんなさいしか言えないのかよ！！」
大きな声で罵られ、思わず体を丸める。
私を叩くために上げた手は振り下ろされずに、舌打ちをして元の位置に戻された。
「何よ、私が悪いみたいなその態度」
「そんな、」
「私が怖い？」
怖い。
怒り狂って手を上げる姿はまるで般若のよう。
でも、そんなことをバカ正直に言うほど私は怖いもの知らずじゃないから。
「…そんな事ないよ、大好きだよ」
途端に瞳の色が色褪せる。
「あんたに大好きなんて言われたところで、何にもならないのよ。…返してよ、あの子を」
ごめんなさい。
謝ることしか出来ない、私は無力なのだから。
神様に何度お願いしたことだろう。
お願いだから、私とあの子を取り替えてください、と。
何故あの時死んだのは彼女で、私ではなかったのだろう。
死にたい私と生きて欲しいと渇望される彼女。
どうしてこんなに残酷なのだろう。
もういい。と吐き捨てた母親は焼酎の瓶を持ちながらフラフラと寝室に消える。
きっとこれから新しい男が来るのだろう、私はその度に母親の甘ったるい声に耐えなければならないのだ。
ああ、恋なんて、愛なんて。
そこから生まれるのが母親のようなモンスターなら、私は一生そんなものを知りたくなんかない。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
「…て、…。てください、…起きてください！」
「ッ！」
は、と目が覚める。
すぐそこには帽子をかぶった男の人。
随分夢見の悪い悪夢を見てしまった。
額に流れる汗を拭いて、起こしに来た人を見上げる。
「…あ、タッタくん…」
「Aちゃん、久しぶりだね」
生きてたんだ。
思っていたことが顔に出たのか、タッタくんが少し胸を張って「ここで整備工として雇ってもらってんだよ！」と言った。
なんだかその様子がおかしくて笑いが込上げる。
「あ、ごめんね。女の子の部屋に入っちゃまずいなって思ったんだけど、ドアをノックしても起きなくて」
「ああ…ごめん、ずっと寝ちゃってた。こんなにいいベッドで寝るのは初めてだから」
「ええ？またまたぁ」
冗談として受け取ってくれたみたいだけど、そもそもベッド自体で寝るのが初めてだ。
こんなにふわふわでふかふかな毛布にくるまれて寝れるなんて、幸せかもしれない、なんて。
こんな世界で幸せを噛み締めたらやっていけないのだけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みりん(プロフ) - はーとさん» わぁ嬉しいです( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )！ 褒め方が上手すぎて更新意欲が止まりません！笑 今後ともよろしくお願いします！ (2023年1月26日 2時) (
レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - みりんさん» 本家のストーリーもありつつチシヤとのシーンがオリジナルで加えられていて最高です✨️✨無理はせずにこれからも更新お願いします🙇♂️これからも読ませていただきます^^ (2023年1月25日 17時) (レス) id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - そらのさん» 嬉しいです…！止まらなくて、気づいたらもう移行なのですが最後まで付き合ってくださるとありがたいです՞･֊･՞！ 更新が捗ります🫶🏻 (2023年1月25日 4時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
そらの(プロフ) - 主様の小説本当好きです！チシヤの小説少ないのでこの作品が楽しみで仕方ないです！更新楽しみにしております！ (2023年1月25日 4時) (レス) @page47 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はーとさん» 嬉しいコメントありがとうございますꈍ .̮ ꈍ こういうコメントのおかげで更新する気力が湧いてきます！今日も頑張りますね💪🏻( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ ) (2023年1月25日 3時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みりん | 作成日時：2023年1月18日 5時
