理想郷? ページ14
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「それで?この娘をここに入れようというのか」
「ああ、たまたま鬼ごっこで出会ったんだ。」
異様な空気に、早速逃げ出したくなる。
彼の後を追うと、「ビーチ」と呼ぶには程遠いホテルに連れてこられて、あれよあれよという間に大きい部屋に通された。
「…そうか。名前は?」
「…あ、Aです」
「この世界について何を知っているのかね」
「…まだ、何も。」
チシヤが私の傍を離れて、ドアに持たれながら腕を組む。
途端に不安な気持ちになりながら前を向くと、近くに来ていたハーフアップの男に舐めるように見られた。
「ふーん…。チシヤ、お前が連れてくるなんざ珍しいな」
「…迷い子みたいなもんだよ」
「ここは迷子センターじゃねぇぞ」
肩に担いでいるのは、先程鬼ごっこで馬が持っていたようなマシンガン。
怖くて目を伏せると、こっちを向け、というように手で上を向かせられた。
「ニラギ。丁重に扱わないと、女の子に嫌われちゃうよ」
「アァ!?」
チシヤの挑発的な発言に、ピアスが開けられた眉毛がぴくりと動く。
ニラギ、と言うのか。
「まぁ落ち着け。」
サングラスを掛けた男に窘められるが、ニラギは一向に引かない。
坊主の男に目配せをして、その男が手のひらをヒラヒラとさせると大人しく後ろに下がった。
きっと彼の忠誠心はこの無精髭の男じゃなくて坊主の男にあるんだろう。
アグニ、と言ったか。前回のゲームで男を引連れて行動していた。
観察している私をじっと見つめた男は「ボーシヤだ。ここのトップだよ、よろしく。」と握手を求めてきた。
「…よろしくお願いします、ボーシヤさん」
「さん付けはよしてくれ」
「…あの、ここは…?」
「あぁ、改めて説明しよう。ここはビーチ、人々の理想郷だ」
理想郷。
聞こえは良いが、実際のところどうなのだろう。
チシヤが案内してくれたは良いものの、まだこの世界のことを何も知らずにいるせいか少しだけ不信感が芽生える。
「おいおいおじょーちゃん、不安そうな顔をして男に媚びるつもりかよ」
男は尚も言い募る
「顔は可愛いからなァ、俺様の下につくってんなら守ってやってもいいぜ。なぁ、大将」
アグニは面倒くさそうに頷きながら、早くこれが終わってくれないかなというようにため息をついた。
「じゃあ、大将のお許しも出たことだし2人で部屋に、」
「ニラギ。勝手は許さない。まずはここのルール説明と、トランプの回収だ。」
トランプ?ルール?
頭の中がハテナで埋まる中、ドアにもたれているチシヤが少しだけ不機嫌そうな顔をしているのに気が付かなかった。
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みりん(プロフ) - はーとさん» わぁ嬉しいです( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ )! 褒め方が上手すぎて更新意欲が止まりません!笑 今後ともよろしくお願いします! (2023年1月26日 2時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
はーと(プロフ) - みりんさん» 本家のストーリーもありつつチシヤとのシーンがオリジナルで加えられていて最高です✨️✨無理はせずにこれからも更新お願いします🙇♂️これからも読ませていただきます^^ (2023年1月25日 17時) (レス) id: f292a3492c (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - そらのさん» 嬉しいです…!止まらなくて、気づいたらもう移行なのですが最後まで付き合ってくださるとありがたいです՞・֊・՞! 更新が捗ります🫶🏻 (2023年1月25日 4時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
そらの(プロフ) - 主様の小説本当好きです!チシヤの小説少ないのでこの作品が楽しみで仕方ないです!更新楽しみにしております! (2023年1月25日 4時) (レス) @page47 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
みりん(プロフ) - はーとさん» 嬉しいコメントありがとうございますꈍ .̮ ꈍ こういうコメントのおかげで更新する気力が湧いてきます!今日も頑張りますね💪🏻( ¤̴̶̷̤́ ‧̫̮ ¤̴̶̷̤̀ ) (2023年1月25日 3時) (レス) id: 54bed94868 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みりん | 作成日時:2023年1月18日 5時