想う ページ20
「朝鳴ー!今日もド派手に稽古だァ!」
私の隊服の首元を引っ掴んで、ずるずると引きずりながら嫌がる私をよくあの人は訓練場に連れて行った
吐くまで鍛えたあとは、うんと優しい笑みを浮かべて頭を撫でてくれた
「…宇髄さん、私、好きです」
そんな中で芽生えた恋心
浮つくのもいい加減にしろ、と叱責されるかと思ったが、彼はまた、優しい笑みで私の頭を撫でただけだった
彼が柱を引退したあとも、私は足繁く彼の屋敷へ通った
何度も指南を受け、何度もしばかれ、何度も倒れた
それでも、あなたの目と腕を奪った仇を取りたかった
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「…行くな、なんて言えねェなァ」
情けないほどに弱々しく微笑むあの人、宇髄さんを見たのはあれが最初で最後だった
無限城へ行くのだと、鬼舞辻無惨と闘うのだと、告げたあの日
彼は歯を食いしばって私の頭を優しく撫でた
「…私、みんなの仇をとってきます」
「…ド派手にいってこい」
親の、仲間の、仇をとって、これで終わらせなければならない
「なァ、朝鳴…」
「…はい、なんでしょう」
「…派手にいい手だな」
ゴツゴツした、豆が何度も潰れては治った手
それを、片方しかない手でそっと掴んでくれる
「…宇髄さんもいい手、ですね」
「俺は片方しかねェけどな」
「…守りたかったのに、すみません」
「謝ることじゃねぇよ」
俯いた瞬間、握られた手がそのまま宇髄さんの方に引き寄せられ、ぐっと体が近づいた
そのまま、私のことをすっぽりと包み込んだ宇髄さんはそっと耳元で言った
「…絶対に、帰ってこいよ。ここで、お前を、俺は待ってるからな」
震えた、声
(…私はあのとき、なんて返したんだったかな)
あんな宇髄さんの声を聞いたことがなくて、私までもが泣きそうになったことだけは覚えてる
(…まぁどっちにしろ、私は無限城で死んだんだ)
約束を守れなかったことを悔いた
一瞬だった気がする、死んでしまうまで
その刹那によぎったのは眩い銀色と鮮やかな赤色だった
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作者名:バボちゃん | 作成日時:2019年12月7日 11時