誠凛のマネージャー (ページ3)

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「彼女は話が上手いです」

「へぇ、そうなのね。……それだけ？」

黒子が少し深刻そうな顔つきで言ったわりにはそれほど重要でなさそうなことだったので、リコは少し間抜けな声を出した。

「はい。話が上手い分、話を変えるのも上手いんです。ですから、小金井先輩はたぶん違う話題で盛り上がってると思います」

いまだに楽しそうにしている小金井を黒子は見た。

ことの重要さを理解したリコは小金井を呼び戻した。

「どうしたのカントク？」

なぜ呼び出されたのか分からない、というような表情の小金井は疑問を口にした。

「さっき何話してた？」

「何って昨日見たテレビのことだけど？」

ごく当然のように言った。

「うそ…。ほんとに話題変わってる…」

絶句するリコの代わりに伊月がこう言った。

「コガ、お前はなんのために話しかけたのか覚えてるか？」

「えっと……あっ、マネージャー勧誘のためだった！」

少し間を置いた後、ハッと驚いたように答えた。

ここでようやく本来の目的を思い出したようだ。

「…強敵ね」

独り言のようにつぶやくリコの声はHR前の予鈴の音にかき消された。

「一旦解散。1年は休みの時間ごとに勧誘お願いね。私たち2年は昼休みに行くから。今日中にあの子を攻略するわよ」

「カントク、ちょっと待ってくださいよ！小金井先輩が無理だったんですよ。俺たちには無理ですって！」

「待った」をかけたのは降旗だ。

先輩である小金井が話を変えられたことすら気づけなかった事実に、後輩の自分たちにはその役割は荷が重く感じたようだ。

今では入部させることに一番乗り気なリコは降旗の言葉にイラつきを覚えた。

リコは情けない顔をする降旗の頭を鷲掴んだ。

「無理じゃなくてやるのよ」

「は、はい！」

プルプルと子鹿のように震える降旗を余所にリコは火神大我の方を見た。

先程から一言も喋らない火神に喝を入れた。

「火神くんもしっかり参加しなさいよ」

「…うっす」

渋々ながらに返事をした火神を見て、2年は自分たちのクラスに戻っていった。